「LGBTの人には、安心できる居場所があるのだろうか」。ふとそんな疑問を抱いたことはないでしょうか。実は日本には、当事者を支える民間の団体が数多くあります。相談窓口の運営、居場所づくり、政策提言と、その役割はさまざまです。
この記事では、主な団体を例に、それぞれが担う役割の違いをわかりやすく紹介します。当事者はもちろん、身近な人を支えたいと考える方にも役立つ内容です。役割の違いを知ることが、自分に合った支えを見つける手がかりになります。
「本当の自分」を出せない──LGBTの人が感じる孤立の現実
はじめに、なぜ「居場所」が必要なのかを考えてみましょう。その背景には、当事者が日常のなかで感じている孤立があります。性的マイノリティは人口の数%いるとされますが、その多くは声をあげにくい状況にあります。周囲にカミングアウトする人が少ないため、当事者の数は把握しにくいのが実情です。学校や家庭でのつまずきと、調査が示す数字の両面から見ていきます。
学校でも家でも、悩みを言えない子どもたち
「LGBT」という言葉は、近年広く知られるようになりました。しかし当事者の子どもや若者の多くは、いまも悩みを抱えています。学校でも家でも、自分のことを安心して話せないと感じているのです。
周囲の何気ない言葉に傷ついても、その気持ちを打ち明けられないことがあります。身近に同じ立場のロールモデルがおらず、孤独を深めやすいという課題もあるのです。相談できる相手が身近にいないと、悩みを一人で抱え込んでしまいがちになります。
たとえば、スカートをはくのに抵抗のあった生徒が、ジャージで登校したところ、教師から着用を認められず、そのまま帰宅させられたという体験談もあります。
数字で見る孤立──10代の約3割が強い孤独感
孤立は、一部の人だけの問題ではありません。認定NPO法人ReBitが2022年に行った調査を見てみましょう。
孤独感が「常にある・しばしばある」と答えた10代のLGBTQは、29.4%でした。これは、LGBTQ以外を含む内閣府調査のおよそ8.6倍にあたります。20代や30代でも、同様に孤独感を抱える割合は高い水準です。多くの若者が、声に出せないまま孤独を抱えている現実がうかがえます。
同じ調査には、就職活動で困難を経験したという当事者の声も寄せられています。だからこそ、安心して頼れる場所が求められているのです。
相談窓口──「まず話せる場所」をつくる

孤立を防ぐ第一歩は、「誰かに話せること」です。ここでは、悩みを安心して打ち明けられる相談の窓口を紹介します。国が支える電話相談と、民間がまとめる案内という二つの形があります。どちらも無料で利用できるため、経済的な負担を気にせず相談できます。
24時間・無料で電話できる「よりそいホットライン」
「よりそいホットライン」は、社会的包摂サポートセンターが運営する電話相談です。国の補助を受けており、24時間いつでも利用できます。通話料もかからないため、費用の心配なく相談可能です。
音声ガイダンスで番号を選ぶと、セクシュアルマイノリティ専門ラインにつながります。性のあり方に詳しい相談員が、カミングアウトやアウティングなど幅広い悩みに対応します。同性愛や性別への違和感、家族や職場の悩みなど、内容は問いません。
何から話せばよいか分からない段階でも、まず利用できる仕組みです。全国の多くの民間団体も協力し、この相談を支えています。一人で抱え込む前に、気軽に電話をかけられる点が心強い仕組みです。
全国の相談先を地域別にまとめる取り組み
「どこに相談すればいいのか分からない」という人も少なくありません。認定NPO法人虹色ダイバーシティは、そうした人のために相談先リストを公開しています。このリストでは、全国の電話相談やLINE相談、対面相談などが、地域別に整理されています。
身近な人には言いにくいとき、まず頼れる入口になってくれます。自分の住む地域から、合った窓口を選べるのが特徴です。活動内容や対象がはっきり示された、信頼できる窓口を見つける助けにもなります。初めて相談する人でも、安心して問い合わせやすい工夫がされています。
居場所づくり──安心して過ごせる「場」を提供する
相談の次に大切なのが、同じ立場の人と出会える「場」です。ここでは、安心して過ごせる居場所をつくる団体を紹介します。誰でも入れる常設の拠点と、若者に特化した居場所の二つを見ていきます。どちらも、無理に自分を語らなくてよい場であることを大切にしています。
誰でも入れる常設スペース「プライドハウス東京レガシー」
プライドハウス東京レガシーは、東京・新宿にある常設のLGBTQセンターです。全国で初めての常設拠点として、すべての人に扉を開いています。LGBTQに関する情報を発信し、安心して過ごせる居場所を提供しています。
無料の個別相談や、若者向けのプログラムなども行っています。大切な人を亡くした経験を語り合う会など、多様な取り組みも用意されています。修学旅行の訪問を受け入れるなど、学びの場としても活用されています。西日本でも、2022年に「プライドセンター大阪」が開設されました。常設の拠点が広がることで、当事者が全国どこにいても頼れる場所に近づきやすくなります。
10代〜20代が集まれる「にじーず」
一般社団法人にじーずは、10代から23歳までのための居場所を開いています。「自分もそうかもしれない」と感じている人も参加できます。2016年に始まり、今では全国各地やオンラインで定期的に開かれています。
参加費は無料で、話したくないことは話さなくてかまいません。雰囲気が合わなければ、途中で退出してもよいという配慮もあります。近年は、オンラインを使った居場所づくりも広がっています。気軽に参加できる工夫が、孤立を防ぐ支えになっています。年齢の近い仲間と出会えることも、この場所ならではの魅力です。
政策提言──社会のルールそのものを変える
個人を支えるだけでなく、社会の仕組みを変えようとする団体もあります。ここでは、政策提言という役割を紹介します。法律の整備を求める動きと、データで社会を動かす動きの二つを見ていきます。
差別をなくす法律を求める「LGBT法連合会」
LGBT法連合会は、2015年に発足した全国連合会です。全国の多くのLGBT関連団体が賛同し、ともに活動しています。活動の柱は、政策提言・ネットワーキング・エンパワーメントの三つです。
性的指向や性自認に基づく差別をなくすための法整備を、国に求め続けています。当事者は長い間、政策を話し合う場に入りにくい状況に置かれてきました。その声を束ねて国に届けることが、この団体の大きな役割です。
賛同する団体は全国で100を超え、地域ごとの会議も開かれています。国会議員に直接働きかける催しも、これまで重ねてきました。個々の団体だけでは届きにくい声を、全国規模でまとめて発信できる点が強みです。
調査データで社会を動かす「虹色ダイバーシティ」
虹色ダイバーシティは、調査研究を政策提言につなげている団体です。当事者アンケート「niji VOICE」では、累計2万名以上の声を集めてきました。
また、パートナーシップ制度の導入状況を継続して調べています。これは、同性どうしのカップルを自治体が公的に認める仕組みです。2025年6月時点で、制度を持つ自治体は全国532にのぼりました。
人口カバー率は92%を超え、この調査は裁判の証拠にも用いられました。集めたデータは、企業や行政が施策を進めるときの裏づけにも使われています。さらに、これらの声は学術研究にも活用されています。声を数値として可視化することが、社会を動かす力になっています。
学びと仕事の両面から支える「ReBit」
認定NPO法人ReBitは、2009年に設立された団体です。学校や行政、企業で、LGBTQに関する授業や研修を重ねてきました。その回数は累計で約2,200回、22万人以上に届いています。
また、就活生らへのキャリア支援は、約13,000名を超えます。さらに、LGBTQかつ精神・発達障害のある人向けに、渋谷区と大阪市の事業所で就労移行支援も行っています。
代表自身も当事者であり、その経験が活動の出発点になっています。教育と就労という角度から、孤立を防いでいる団体だといえます。学びの場と働く場の両方を支えることで、生活全体を見据えた支援を実現しています。
「居場所」は一つではない──役割の違いを知ることが第一歩
LGBTの人を支える形は、決して一つではありません。相談窓口、居場所づくり、政策提言と、団体ごとに役割は異なります。だからこそ、その違いを知ることが大切です。
当事者にとっては、「まず頼れる先がある」という安心につながります。支援者にとっては、「知って紹介できる」という力になります。
支える形が増えることは、孤立に向き合う社会の力そのものです。まずは気になる団体のサイトをのぞくことから、小さな一歩を始めてみてください。

