LGBT支援団体の多くは、寄付や助成金、ボランティアといった善意に支えられて活動しています。けれども、その善意だけでは活動を長く続けるのが難しく、背景には資金と人材という壁があります。
この記事では、その壁の正体を見たうえで、支える側を支えるために私たちにできることを考えます。
なぜ「善意」だけでは支援活動が続かないのか
LGBT支援団体の多くは、規模の小さなNPOとして運営されており、財源はもともと不安定になりがちです。はじめに、団体のかたちとお金の入り方から、活動を続ける難しさの全体像を見ていきましょう。
支援団体の多くは小さなNPO
LGBTの支援を担う団体には、NPO法人や任意団体が多く、その規模は大きくないところが少なくありません。内閣府の最新の実態調査では、LGBTを含む一般のNPO法人(認証法人)の年間収益の中央値は約600万円でした。つまり、半数ほどの団体が、年間およそ600万円以下の規模で活動していることになります。
内閣府の同じ調査では、収入から支出を引いた収支の差の中央値は、認証法人で約1万円でした。多くの団体が、ほとんど手元にお金を残せない、ぎりぎりの状態で活動しているのです。
支援団体が担う役割は一つではなく、相談を受けたり、安心して集える居場所をつくったりします。学校や企業での啓発活動や、当事者の就労を支えるサポートに取り組む団体も少なくありません。
こうした複数の役割を、わずか数名のスタッフやボランティアで支えている団体も多いのです。少ない人数と予算で多くを担うほど、運営の余裕は小さくなり、無理が生じやすくなります。
活動を支えるお金が「不安定」
NPOのお金の入り方は、大きく会費、寄付金、補助金・助成金、事業収益の四つに分けられます。内閣府の実態調査では、団体の種類によって、この収入の構成は大きく異なっています。
事業を主な収入源とする認証法人では、事業収益が81.4%と大部分を占めています。一方、寄付を多く集める認定・特例認定法人では、寄附金が48.2%を占め、最も大きな財源です。さらに補助金・助成金が24.6%を占めるなど、外部からの資金に頼る面も小さくありません。
寄付や助成金は、年ごとに金額が変わりやすく、今年集まっても来年も同じとは限りません。そのため、こうした資金に頼る団体ほど、一年先の収入の見通しを立てにくくなります。安定した事業収益を持たない団体は、収入の不安定さに悩まされることになるのです。
NPO法人の運営の安定度は、こうした収入源をどう組み合わせるかによって、大きく変わってきます。外部からの資金に頼る割合が高い団体ほど、その年の状況に運営が左右されやすくなるのです。お金の流れが読めない状態は、活動を続けるうえで見えにくくも重い壁になっているのです。
資金の壁 ―― 集めにくく、続きにくいお金

善意に頼る運営が難しい最大の理由は、活動を支えるお金そのものが抱える弱さにあります。日本では寄付が広がりにくく、助成金も一時的で、認定を受けられる団体もごくわずかなのです。
日本における寄付の偏り
NPOというと寄付で成り立つイメージがあるかもしれませんが、実態は少し異なります。内閣府の最新の実態調査では、一般のNPO法人(認証法人)が受け取る寄付額の中央値は、0万円、平均値は30.3万円でした。
一方で、認定・特例認定法人が受け取る寄付額の中央値は約94.8万円、平均値で4,884万7千円であり、認証法人と大きな差があります。寄付を集めやすい一部の団体と、そうでない多くの団体との間に、開きが生じているのです。
国内の寄付の広がりは、日本ファンドレイジング協会の「寄付白書」で詳しく知ることができます。不安定で偏りが大きい寄付だけで運営を支えるのが難しいなかで、団体は複数の財源を組み合わせる工夫を迫られています。
助成金は「あるうちだけ」の一時的な資金
助成金や補助金は返済のいらない資金で、国や自治体、民間の財団などから提供されています。ただし一般に、その多くは単年度の募集で使いみちも定められ、翌年も受けられる保証はありません。
そのため助成金は、新しい活動を始める後押しにはなっても、続けるための土台にはなりにくいお金です。また助成金は特定の事業や目的に向けて出されることが多く、日々の運営費には使いにくい面があります。
そのため団体は、助成の期間が終わったあとの資金繰りを、つねに考えておく必要があるのです。
助成を受けている間に事業を広げても、期間が終われば縮小せざるを得ないことがあります。「あるうちだけ」の資金に頼りすぎると、支援そのものが途中で途切れてしまいかねません。安定した運営のためには、助成金以外の財源をあわせて育てていくことが欠かせないのです。
認定NPO法人になれる団体はごくわずか
NPO法人のなかには、一定の基準を満たした「認定NPO法人」と呼ばれる団体があります。認定を受けると、寄付をした人が税の優遇を受けられ、団体は寄付を集めやすくなります。
認定を受けるには、パブリック・サポート・テストと呼ばれる基準を満たす必要があります。これは、一定数以上の人から広く寄付を集めているかどうかを確かめるための仕組みです。寄付が集まりにくい小さな団体にとって、この基準を満たすのは簡単なことではありません。
そのため、この認定を受けている団体は、全体のなかでごくわずかにとどまっています。内閣府の統計では、NPO法人は約4万9千件あり、そのうち認定は約1,300件にとどまります。割合にすると全体の3%にも届かず、多くの団体は認定のない状態で活動していることになります。
運営の壁 ―― 人と経験が続かない
お金と並んで団体を悩ませているのが、活動を実際に担う「人」をめぐる問題です。多くの団体は無償のボランティアに支えられ、有給スタッフを雇う余裕がない場合も少なくありません。
活動の多くがボランティアに支えられている
支援団体の活動は、その多くが無償で関わるボランティアの熱意によって支えられています。人件費を十分に確保できず、本業や学業のかたわらで相談対応や運営を担う人も少なくありません。
実際、内閣府の調査では、報酬を受け取る役員の数は、認証法人で中央値が0人、平均値でも0.2〜0.5人でした。多くの団体では、役員が無報酬のまま運営を担っているのが実情なのです。
担い手にかかる経済的負担は決して小さいものではなく、無理を重ねることで活動継続が困難になる可能性があります。無償の熱意だけに頼りきる運営は、いつまでも続けられるものではないのです。
次の世代への引き継ぎが難しいという課題がある
長く現場を支えてきた人ほど負担が集中し、次の世代を育てる余裕を持てないことがあります。そのため、世代交代の遅れや後継者育成の不足が課題となっている課題もあるのです。担い手が次の世代へ引き継がれなければ、活動そのものが止まってしまう恐れがあります。
活動のノウハウや人とのつながりは、長い時間をかけて少しずつ築かれていくものです。それを次の世代へ手渡す余裕がなければ、積み重ねてきた経験まで失われてしまいます。人が続いていく仕組みは、お金と同じくらい、団体の継続にとって欠かせないものなのです。
「支える側」を支えるために私たちにできること
ここまで資金と人という二つの壁を見てきましたが、私たちにできることも少なくありません。大切なのは、一度きりで終わらせず「続けて」関わることで、お金と、それ以外の両面から考えます。
一度きりでなく「続ける寄付」が力になる
団体にとって何よりも助かるのは、先の見通しを立てられる、継続的で安定した支援です。毎月決まった額を寄付していく仕組みは、一般にマンスリーサポーターなどと呼ばれています。たとえ少額でも継続することで、団体は先の計画を立てやすくなり、運営を安定化できるのです。
継続的な支援は、団体が人を雇い、腰を据えて活動するための大切な土台になります。単発の寄付もありがたいものですが、継続的な支援はより大きな安心へとつながります。
月に数百円であっても、それが続けば、人件費のような毎月の費用を支える確かな力になります。
寄付をする際は、お金の使いみちをはっきりと示している団体を選ぶと、より安心できます。認定NPO法人への寄付であれば、確定申告を通じて税の優遇を受けることもできます。続ける寄付は、その場限りの善意を「続く力」へと変えていく、確かな方法です。LGBT活動を支援するための寄付をご検討ください。
お金以外の「支える」も大きな力
支える方法はお金だけではなく、時間やスキル、情報の発信もまた、団体の大きな力になります。イベントの運営を手伝ったり、団体の活動をSNSなどで広めたりする関わり方があります。
企業や行政、NPOがそれぞれの強みを持ち寄って協力する動きも、少しずつ広がっています。会計や広報といった専門的なスキルを活かして関わる、プロボノと呼ばれる形もあります。
企業であれば、団体への協賛や連携を通じて、社会を動かす関わり方をとることもできます。職場づくりの目安としては、企業向けの評価指標である「PRIDE指標」が知られています。
PRIDE目標は、2016年に設定された日本初の職場におけるLGBTQ+などの政敵マイノリティに関する取り組みの評価指標です。こうした指標を参考に、自分に合った形で無理なく関わることが、支える側を支えるための確かな一歩になります。
善意を「続く力」に変えていくために
LGBT支援団体の多くは、たくさんの人々の善意によって、日々の活動を支えられています。しかし善意だけでは、集めにくいお金と、続きにくい人材という二つの壁を越えるのは難しいのです。
大切なのは、その善意を一時の応援で終わらせず、続く仕組みとして支えていくという視点です。支える側を支えるという視点は、多様性を大切にするこれからの社会に欠かせないものです。
一人ひとりの小さな関わりが集まることで、支援の輪はより確かなものになっていきます。毎月の小さな寄付でも、自分のスキルを活かした関わりでも、無理のない範囲で構いません。できることから始めるその一歩が、支援を支える大きな力へとつながっていくはずです。

