LGBTへの支援というと、自治体のパートナーシップ制度や相談窓口を思い浮かべる方が多いかもしれません。けれども、行政の手が届きにくい部分を日々支えているのが、民間のNPOや支援団体です。この記事では、こうした団体がどんな支援を行っているのか、そして「利用する」「支える」「連携する」という3つの関わり方を、立場ごとにわかりやすくご紹介します。
そもそも、なぜ民間の支援団体が必要なのでしょうか
LGBTに関する支援は、国や地方自治体といった行政によるサポートが広がりつつあります。それでもなお、民間の支援団体が必要とされるのはなぜでしょうか。
行政の窓口だけでは、すべての困りごとには届きません
近年は自治体の相談窓口や制度が少しずつ整ってきましたが、それだけでは支えきれない「すきま」が残っているのも事実です。たとえば、次のような場面です。
- 平日の日中しか相談できず、仕事や学校のある人が利用しづらい
- 相談したい内容が、性的指向や性自認に詳しい担当者でないと話しにくい
- 制度の対象から外れてしまい、どこに頼ればよいか分からない
こうしたすきまを補っているのが、民間の支援団体です。実際、国の事業である「よりそいホットライン」でも、全国の約500の民間団体が協力して相談に対応しており、官と民が連携してはじめて支援が成り立っています。つまり民間団体は、公的な支援を補う欠かせない存在なのです。
民間の支援団体は「制度を補う存在」
LGBTの当事者は、学校・職場・家庭といった日常のあらゆる場面で困りごとに直面します。制度だけではカバーしきれない、こうした「暮らしのレベル」の課題に寄り添えることが、民間団体の大きな強みです。
たとえば認定NPO法人ReBitは、2009年から「学ぶ・働く・暮らす」のそれぞれの場面で当事者を支える活動を続け、国内最大級の認定NPO法人へと成長してきました。長く現場に向き合ってきた団体だからこそ、当事者の実情に合った具体的な支援ができます。
民間団体ならではの意義は、ほかにもあります。当事者自身やその経験を持つスタッフが運営に関わっていることが多く、「同じ立場だから話しやすい」という安心感を生みやすいこと。行政の制度が変わるのを待たずに、必要とされる支援を機動的に始められること。そして、相談から居場所、就労まで、一つの困りごとに継続して寄り添えることです。 制度が社会の「枠組み」をつくるのに対し、民間団体は「一人ひとりの困りごと」に手を伸ばす役割を担っているといえます。だからこそ、行政と民間の両方がそろってはじめて、支援は厚みを持つのです。
支援団体が担っている「4つの役割」を知っておきましょう

支援団体と一口にいっても、その活動は多岐にわたります。ここでは、LGBTの当事者を支える代表的な4つの役割を整理してご紹介します。
① 相談支援 ― 悩みを安心して話せる窓口
多くの団体が、当事者やその家族・周囲の人からの相談を受け付けていますが、いずれも研修を受けた相談員が、プライバシーを守って対応しています。相談の方法は団体によってさまざまです。電話なら声で直接、相談員に話を聞いてもらえます。
LINEやメールを使えば声を出さずに文字でやりとりでき、対面やオンラインの相談は予約制で、じっくり時間をかけて話せるのが特徴です。
虹色ダイバーシティがまとめた相談先リストには、こうした窓口が地域別に紹介されています。「誰かに話したいけれど、身近な人には言いにくい」というときに、まず頼れる入口になります。
② 居場所づくり ― 安心して過ごせる「場」の提供
同じ立場の人と出会える「居場所」を提供する団体もあります。性的指向や性自認に関わらず、誰もが安心して過ごせる場所があることは、孤立を防ぐうえでとても大切です。
とりわけ若い世代にとって、居場所の存在は切実です。10代のLGBTのなかには、家庭や学校で本当の自分を出せず、孤立を感じている人が少なくありません。
NPO法人ReBitの調査では、孤独感を「しばしば・常に」感じる10代のLGBTQは約3割にのぼり、一般の同世代より大幅に高いことが報告されています。同じ立場の仲間や信頼できる大人と出会える場は、こうした孤立を防ぐ大切な役割を果たしています。
③ 教育・啓発 ― 偏見や無理解をなくすための活動
LGBT支援団体は、当事者への相談支援だけでなく、社会全体の理解を深めるための教育・啓発活動も行っています。学校や企業、自治体などで講演や研修を実施し、性の多様性に関する正しい知識を伝えることで、誤解や偏見の解消を目指しています。一人ひとりが違いを尊重できる社会づくりを進めることも、支援団体の重要な役割の一つです。
④ 就労支援 ― 自分らしく働くためのサポート
就職活動や職場では、性的指向や性自認に関する困りごとが起きやすく、安心して相談できる場が不足しているのが現状です。そこで、働くことに特化した支援を行う団体があります。
NPO法人の中には、就活生らへのキャリア相談や企業向けの研修を行う団体や、精神・発達障害などの困難をあわせて抱える人のための就労移行支援にも取り組んでいる団体があります。「自分らしく働きたい」という願いを、専門的な立場から後押ししてくれる存在となっているのです。
【当事者・周囲の人へ】支援を「利用する」つながり方

ここからは、実際に支援とつながる方法を立場別にご紹介します。まずは、支援を「利用する」側の関わり方です。
まずは電話やLINEで相談してみましょう
最初の一歩としておすすめなのが、電話やLINEでの相談です。匿名で利用でき、費用もかからない窓口が用意されています。特に、国の補助を受けて運営されている「よりそいホットライン」は、24時間いつでも利用でき、通話料もかかりません。
同ホットラインには「セクシュアルマイノリティ専門ライン」が設けられており、性のあり方に詳しい相談員が対応します。同性愛や性別の違和感、アウティング、カミングアウトなど、幅広い悩みを相談できるのも心強い点です。
電話の音声ガイダンスで番号を選ぶだけで専門ラインにつながるため、はじめての方でも利用しやすい仕組みになっています。「何から相談していいか分からない」という段階でも、まずは話してみることから始められます。
居場所イベントに参加してみるという選択肢
相談だけでなく、同じ立場の人と出会える居場所に参加するのも一つの方法です。「にじーず」は、10代から23歳までのLGBT(かもしれない人を含む)を対象に、全国各地やオンラインで居場所を開いています。
参加費は無料で、事前申し込みが不要な回もあります。雰囲気が合わなければ途中で退出してもよく、話したくないことは話さなくてよいという配慮もあります。気軽に足を運べる工夫がされているので、「いきなり相談はハードルが高い」と感じる人にも向いています。
自分に合う団体を見つける「3つの探し方の基準」
たくさんの団体があるなかで、自分に合う支援先を見つけるには、いくつかのポイントを意識しておくと安心です。主に次の3つの視点があります。
1つ目は、ネットワークから探すこと。 全国の団体が加盟しているネットワークの一覧を活用すれば、地域やテーマごとに絞り込んで探すことができます。
2つ目は、対象が自分に合っているかを確認すること。 団体ごとに、対象となる年齢・地域・相談内容が決まっています。自分の状況に当てはまるかをチェックしましょう。
3つ目は、運営の信頼性を確かめること。 「認定NPO法人」かどうかなど、組織としての透明性を確認しておくと、より安心して相談できます。
LGBT法連合会のサイトには、全国の加盟団体が掲載されています。また、認定NPO法人かどうかは内閣府のNPOホームページで確認できます。特定の団体を最初から決めつけるのではなく、こうした基準で複数を見比べることが、自分に合った支援とつながる近道です。
あわせて、活動内容や費用、運営者がはっきり示されているかも確認しておくと安心です。なかには、支援をうたいながら高額な費用を求めたり、特定の考え方を押しつけたりする団体がまれにあるため注意が必要だからです。
少しでも不安を感じたときは無理に関わらず、まずは公的な窓口や実績のあるネットワークから相談してみるとよいでしょう。自分のペースで、信頼できる相手を選んでいくことが何より大切です。
【支えたい人へ】寄付やボランティアで「支える」つながり方

支援は、当事者だけのものではありません。「何か力になりたい」と感じる人が、支える側として関わる方法もあります。
ボランティアとして活動に参加する
当事者でなくても、理解者・支援者(アライ)として活動に加わることができます。イベントの運営を手伝ったり、団体の情報発信を支えたりと、関わり方はさまざまです。
支える人が増えることは、団体が活動を続けていくための大きな力になります。当事者を直接知らなくても、社会の一員として理解を示し、行動することそのものが支援につながるのです。
寄付で支える ― 税の控除が受けられる仕組みもあります
直接活動に参加するのが難しい場合でも、寄付という形で支えることができます。少額からでも、団体の活動資金として役立てられます。さらに、「認定NPO法人」への寄付には、税の負担が軽くなる仕組みがあります。個人が認定NPO法人に寄付をすると、確定申告で次のいずれかを選べます。
- 所得控除:寄付した金額から2,000円を引いた額を、所得から差し引けます
- 税額控除:寄付した金額から2,000円を引いた額の40%を、所得税から直接差し引けます
どちらが有利かは収入や寄付額によって変わりますが、多くの場合は税額控除のほうが負担を抑えられます。寄付をすると団体から「寄付金受領証明書」が届くので、確定申告まで大切に保管しておきましょう。支える気持ちが、こうした仕組みによって続けやすくなっています。
【企業の方へ】連携して「社会を変える」つながり方
企業も、支援団体とつながることで社会を動かす力になれます。職場づくりと社会貢献という、2つの方向から関わり方をご紹介します。
PRIDE指標を使って職場環境を整える
企業がLGBTQに関する取り組みを進めるための目安として、「PRIDE指標」があります。これは2016年に策定された、日本で初めての企業向けの評価指標です。次の5つの観点で、職場の取り組みを点検できます。
- Policy(行動宣言):方針を明確に掲げているか
- Representation(当事者コミュニティ):当事者が声をあげられる場があるか
- Inspiration(啓発活動):社内で理解を広げる取り組みがあるか
- Development(人事制度・プログラム):制度や福利厚生が整っているか
- Engagement / Empowerment(社会貢献・渉外活動):社外への働きかけをしているか
これらの観点に沿って取り組むことで、LGBTQを含むすべての社員が働きやすい職場づくりを進められます。指標を一つの道しるべとして使うことが、自社の現在地を知る第一歩になります。
団体への協賛・協働という関わり方
職場の整備に加えて、支援団体そのものを支える関わり方もあります。団体への寄付や協賛を通じて、現場の活動を後押し可能です。
多くのNPO法人は、活動に賛同する企業からの法人寄付を受け付けています。また近年は、企業・行政・NPO・学術機関がセクターを超えて協働する動きも広がっています。一社だけでは難しい社会の変化も、専門性を持つ団体と手を組むことで、前に進めやすくなるでしょう。
つながり方は一つではありません ― 自分に合う関わりから始めましょう
LGBTへの支援は、行政の制度だけで完結するものではなく、民間の支援団体が日々その「すきま」を補っています。そして、その支援とつながる方法は、頼る・支える・連携するというように、決して一つではありません。
当事者として相談してみること、支える側として寄付やボランティアで関わること、企業として職場や社会を変えていくこと――どれも立派な関わり方です。まずは団体の一覧をのぞいてみるなど、できる範囲の小さな一歩から始めてみてはいかがでしょうか。


