「最近、子どもの様子がなんだかおかしい気がする」「急に怒りっぽくなった」「学校に行きたがらない」と感じることはありませんか?もしかするとそれは二次障害のサインかもしれません。
この記事では、二次障害とは何か、なぜ起きるのかをわかりやすく解説します。
発達障害の二次障害とは?
二次障害は、生まれつきの特性である発達障害そのものではなく、環境や関わりの中で後から生じる問題です。発達障害のある子どもは、毎日の生活の中で「うまくできない」「また怒られた」という経験を積み重ねていくことがあります。
そのストレスや傷が積もり積もったとき、もともとの発達障害とは別に、新たな心の問題が生じることがあります。これを二次障害と呼びます。
二次障害は大きく「内在化障害」「外在化障害」、そしてその両方が重なる状態の3つに分けられます。
内在化障害:つらさが自分の「内側」に向かうケース
苦しい気持ちや葛藤が、自分の心の中にたまっていく状態です。不安が強くなったり、気持ちが落ち込んだり、外に出られなくなったりする形で現れます。
- 分離不安障害: 家や、保護者などの愛着のある人から離れることに対して、強い不安がなかなか消えない状態です。「離れたら何か悪いことが起きるかもしれない」という恐怖が持続します。
- 気分障害:気分の落ち込みが長く続いたり、反対に気分が高ぶって自分でもコントロールできなくなったりする状態が、一定期間以上続き、日常生活に支障が出ていることを指します。
- 強迫性障害:「手を洗ったか何度も確認しなければ」「戸締まりをちゃんとしたか」など、頭から離れない考え(強迫観念)や、やめたくてもやめられない行動(強迫行為)がくり返される病気です。
外在化障害:つらさが「外側」に向かうケース
苦しい気持ちや葛藤が、反抗・暴力・問題行動という形で外に出てくる状態です。「わがままになった」「乱暴になった」と見えやすい分、その背景にある苦しさが見落とされがちです。
- 反抗挑戦性障害/反抗挑発症:否定的・反抗的な態度や、大人への不服従がくり返し起きる状態です。反抗しているように見えますが、その多くは「わかってもらえない」という経験の積み重ねからきています。
- 素行症:他の人の権利を侵害する行動(いじめ、嘘、窃盗など)がくり返される状態です。衝動をコントロールすることが非常に難しくなっています。
内在化と外在化が重なるケース
- 重篤気分調節症:激しいかんしゃくが頻繁に起き、落ち着いている時間もイライラや怒りが続いている状態です。
これらはあくまで代表的な例であり、二次障害はうつ病や適応障害、PTSDなど、さまざまな形で現れることがあります。
二次障害があると何が起きる?
二次障害は、子どもの日常生活に深刻な影響を与えます。「気になる行動が増えた」と感じていたのが、気づけば学校にも家にも居場所がない状態になっていた。そんなケースも少なくありません。
学校に行けなくなる
不安や気分の落ち込みが続くと、「朝起き上がれない」「教室に入れない」という状態が生まれます。
最初は「なんとなく行きたくない」という段階でも、無理をして登校させ続けることで症状が悪化し、完全な不登校やひきこもりに発展するケースがあります。
友人関係がうまくいかず、孤立していく
発達障害の特性から人間関係でつまずきやすい子どもは、二次障害が加わることでさらに孤立しやすくなります。いじめの標的になったり、自分から人を遠ざけるようになったりと、学校の中に安心できる居場所がなくなっていきます。
家庭の中での暴言・暴力が起きる
学校で必死に「いい子」を演じてきた反動が、家庭で爆発するケースがあります。保護者への激しい暴言や暴力は、子ども自身も望んでいるわけではなく、限界まで抑え込んできた苦しさが形を変えて出てきているサインです。
非行・問題行動に向かう
行き場のないつらさが、万引きや家出、深夜徘徊といった問題行動として現れることがあります。「悪い子になった」のではなく、苦しさを抱えたまま助けを求める手段を見失った結果です。
命に関わる状態になることもある
二次障害が深刻化すると、自分を傷つける行為(自傷)や、「消えてしまいたい」という気持ちが生まれることもあります。これは子どもが「死にたい」のではなく、「このつらさをなくしたい」というSOSであることがほとんどです。
サインを見逃さないことが何より大切です。
なぜ「わかってもらえない」が心を追い詰めるのか
発達障害のある子どもは、自分でも理由がわからないまま、「できないこと」や「やってしまうこと」を繰り返します。
「授業中に座っていられない」「友達との会話がかみ合わない」「文字をうまく読めない」。そのどれもが「怠けている」のでも「わざとやっている」のでもなく、本人にもどうにもできない特性によるものです。
しかし、その特性が周囲に理解されないとき、子どもの心は少しずつ追い詰められていきます。
「また叱られた」が繰り返されるとき
先生に注意される、親に怒られる、友達に笑われる、そのたびに子どもは「自分はダメだ」という気持ちを積み重ねていきます。
発達障害の特性から、自分の気持ちや言い分をうまく言葉にできない子どもは、「なぜそうしたのか」を説明することができず、誤解されたまま叱責だけが続きます。弁明できないまま責められ続ける経験は、子どもの自己肯定感を著しく低下させます。
負のループから抜け出せなくなる
「叱られる→うまく説明できない→また問題が起きる→誰にも認めてもらえない」
このループが繰り返されるうちに、子どもは「どうせ自分はダメだ」「誰もわかってくれない」という気持ちを強めていきます。その行き場のない苦しさが、次第に心や行動に限界をもたらします。これが二次障害のきっかけです。
「わかってもらえない」という体験は、単なる悲しさではなく、子どもの心を長期にわたって蝕む深刻なストレスなのです。
子どもの心を守るためにできること

二次障害は、早めに気づいて適切なサポートをすることで、症状を和らげたり、進行を防いだりすることができます。特別な対応が必要なわけではありません。日常の小さな関わり方の積み重ねが、子どもの心を守ることにつながります。
家庭でできること
まず大切にしたいのは、「できた」を一緒に喜ぶことです。発達障害のある子どもは、できないことを指摘される経験が多くなりがちです。だからこそ、小さな成功体験を保護者が一緒に喜び、認めることが自己肯定感の回復につながります。
また、失敗したときに責めるのではなく、「そっか、つらかったね」とまず気持ちを受け止めることも重要です。怒るよりも気持ちに寄り添うことが、子どもが「自分はここにいていいんだ」と感じる安心感をつくります。家庭が「失敗しても大丈夫な場所」であることが、子どもにとって最大の心の拠り所になります。
頑張っている中で、「どうしてもうまく対応できない」「保護者のストレスがたまって子どもに当たってしまう」などの状態になるときもあると思います。子どもとどう関わっていけばいいのかを学べる「ペアレント・トレーニング」などもありますので、ぜひ活用してみてください。
学校と情報共有を行う
家庭だけで抱え込まず、学校の担任や支援担当の教員と積極的に情報を共有することが大切です。家での様子、苦手なこと、最近気になっている変化などを伝えることで、学校側も適切な配慮がしやすくなります。
たとえば、「できないことだけでなく、できることにも目を向けて褒める」といった対応につながることもあります。学校での対応を事前に決めておくことで、安心して送り出すことができます。
専門機関への相談
「もしかして二次障害かも」と感じたら、一人で抱え込まず専門機関に相談することをおすすめします。かかりつけの小児科や児童精神科、発達障害支援センターなどが相談窓口になります。
全国に設置されている発達障害者支援センターでは、地域ごとの相談窓口を案内してもらえます。診断や治療だけでなく、保護者自身が「どう関わればいいか」を専門家と一緒に考える場としても活用できます。相談することは、子どもへのサポートにつながります。
二次障害を防ぐために大切な視点

二次障害は「性格の問題」でも「育て方の問題」でもありません。発達障害の特性を持つ子どもが、理解されにくい環境の中で、限界まで頑張り続けた末に現れるサインです。
最も大切な視点は「子どもを変えようとする前に、子どもを取り巻く環境を見直す」ことです。問題行動の表面だけを見て叱るのではなく、「この子は今、何に苦しんでいるのだろう」と一歩立ち止まって考えましょう。そして、保護者だけで抱え込まず、学校や専門機関と連携しながら子どもを支える環境をつくっていくことが、二次障害を防ぐ第一歩になります。
「わかってくれる人がいる」、その体験が子どもの心を救います。一人で抱え込まずに、できることから少しずつ始めてみてください。
参考資料
- 思春期自閉スペクトラム症の内在化障害および外在化障害について(宇佐美 政英)
- 分離不安症(MSDマニュアル家庭版)
- 気分障害(厚生労働省「こころもメンテしよう」)
- 強迫省(強迫性障害)とは(九州大学大学院医学研究院精神病態医学 行動療法研究室)
- 反抗挑戦症(MSDマニュアル家庭版)
- 素行症(MSDマニュアル家庭版)
- 小児と青年におけるうつ病および気分調節症(MSDマニュアル家庭版)

