「ダイバーシティ」「多文化共生」といった言葉が、企業やコミュニティで当たり前に飛び交うようになりました。背景には、日本における「国籍の地図」の変化があります。
2025年末、在留外国人は初めて400万人を突破し、10年前と比較すると約190万人増加しました。約30人に1人が外国籍となった今、ダイバーシティ・多文化共生はよりリアルな課題として浮かび上がっています。
10年前と比較して見えた「多国籍化」
10年前から変わったことは、外国人の人数規模だけではありません。国籍の構成も大きく変化しています。
2015年末時点の主な国籍別の人数を見ると、中国(約71万人)と韓国(約49万人)が過半数を占めていました。フィリピンが約23万人、ブラジルが約17万人と続きますが、人数規模はそれぞれ韓国の半数以下に留まっていました。
一方、2025年末時点では、中国(約93万人)に次いでベトナム(約68万人)が第2位に浮上します。韓国が微減した一方で、フィリピン・ネパール・インドネシア・ミャンマー・スリランカといった東南アジア・南アジアの国々が大きく人数規模を拡大しました。
また、国籍・地域の数は196にのぼり、出身国・地域の多様化が加速しています。
多国籍化はなぜ進んだ?

変化の背景には、人手不足による技能実習制度・特定技能制度の拡大があります。新たに日本にやってきた外国人の多くは、日本での仕事を目的に来日しています。特に、過去10年で最も増加したベトナムの人々は、日本の労働市場において存在感が高まっています。
在留資格別の内訳をみると、永住者(約95万人)に次いで、技術・人文知識・国際業務(約48万人)、留学(約46万人)、技能実習(約47万人)、特定技能(約39万人)と続きます。
特定技能は前年に比べて10万人以上増えており、人手不足による国内での受入れ拡大が見てとれます。
このように、外国人が日本で暮らす目的や背景も複線化しており、在留外国人をひとまとめに捉えることが現実的ではないことが伺えます。
在留資格についての補足
・永住者:日本での永住が認められた資格
・技術・人文知識・国際業務:専門知識や専門技術を生かして働くための資格(エンジニア、通訳、マーケターなど)
・留学:日本の学校で学ぶための資格
・技能実習:日本で仕事の技術を学ぶための資格
・特定技能:人手不足の特定産業分野で働くための資格
その他、在留資格に関する方法は出入国在留管理庁のサイトをご参照ください。
多国籍化が突きつける課題
このような変化の中で、日本で暮らす外国人が多くの困難に直面している事実もあります。特に、「言葉の壁」は大きな問題となっています。
10年前には、様々な場面で中国語と韓国語の表記があれば、過半数の在留外国人をカバーできていました(もちろんそれが十分だったとは言えません)。しかし国籍が多様化した今、従来の言語表記だけでは、多くの外国人に届かない現状があります。
各自治体のホームページを見ると、多言語表記に対応していても機械翻訳によるものが多く、テキスト部分は翻訳されていても画像は日本語のまま…といったように、まだまだ不十分な状況が見てとれます。
行政手続きや病院での診察、子どもの就学、災害時など、特に重要な場面で、言葉の壁がネックとなって必要な支援や手続きに行き着けないケースも多くあります。
災害時に直面する困難
特に、命に関わる状況下では、言葉の壁が深刻な問題となります。
- テレビで呼びかけられる「避難」という言葉が分からず、避難できなかった
- 避難所の情報が分からず孤立してしまった
- 水や食料といった支援物資の受け取り方が分からず、受け取れなかった
- 避難所でのルールが分からずトラブルになってしまった
緊急を要する災害時には、通訳や翻訳を即座に用意することが難しい場面も多いでしょう。そんなときには、「やさしい日本語」を心がけるだけでも、救われる人がいます。例えば、「高台に避難してください」ではなく、「たかいところににげてください」と伝えるだけでも、理解できる外国人は増えます。
「やさしい日本語」は、緊急時はもちろん、日常のコミュニケーションでも大いに役立ちます。

職場や学校で直面する困難
日常的な職場や学校でのコミュニケーションにおいても、外国人は多くの困難に直面しています。職場では、マニュアルの理解・面談での意思疎通・相談窓口の活用などが大きなハードルとなっています。
学校では、日本語の習得が必要な子どもが増えており、授業に追いつけない子どものサポートが問題になっています。また、進路の情報や学校・PTAからの連絡を理解することが、外国人の保護者にとって大きな負担となっています。
10年前は、規模の大きな外国人コミュニティや定住歴の長い層への支援が中心となっていましたが、多国籍化が進んだ今、支援の対象をより細分化して考える必要があります。
共に乗り越えるために
統計の数字の裏には、一人ひとりの今に至る背景や生活があります。
周囲の外国人が日々抱いている不便や不安を想像し、できる一手を差し伸べること。行政だけに任せるのではなく、個人も企業も共に生きる当事者である、という意識を持つこと。 これらが、ダイバーシティや多文化共生をスローガンで終わらせないための、大きな一歩になるはずです。

