「働くなら都市部の方がチャンスは多い」という定説は、果たしてすべての人に当てはまるのでしょうか。都市部の人口密度が却ってメンタルを病ませる結果になってしまうかもしれません。
病気によって体調に波がある、あるいは経済的な困難を抱えているとき、過密で競争の激しい都市部は、時に生きづらさを増幅させてしまうかもしれません。「湯治」ではないですが、人里離れた地方の過疎地で過ごす方が、生活のクオリティがあがるかもしれません。多様性は性別や性的指向だけではなく、働き方も含んで考える概念です。
今回は、地方で自分だけの「ひとりビジネス」を育んで生活していくという生き方について考えてみたいと思います。やり方次第で、とても「生きやすく」なるかもしれません。
地方で働くメリット!~「人波」から解放され自分のリズムを最優先で働ける

都市部での就労には、仕事そのものとは無関係な「環境ストレス」が常に付きまといます。満員電車での通勤、人混みによる感覚過敏、そして分刻みのスケジュールで動く社会のスピード感。慢性疾患やメンタルヘルスに問題を抱えている方にとっては、これらの外部要因は、本来仕事に向けるべきエネルギーを著しく削いでしまいます。
一方で、地方にはそうしたものがありません。過疎化しているのが良い意味で「人波」から解放されているのです。そうした環境で働ければ助かる方は多いと思われます。地方で「ノマドワーカー」的に働くことをイメージして解説していきますが、なぜ助かるのでしょうか? その理由を考えてみましょう。
物理的・感覚的なセーフティネットがある
人が少ない地方では、外出にともなうストレスが劇的に減少します。車移動が中心の地域であれば、公共交通機関での密閉された空間や人混みを避けることができ、パニック障害や感覚過敏を抱える人にとっても、移動そのものが「自分だけの安全な空間」に変わります。
時間の流れを「自分のもの」にできる
都市部に比べて地方では、周囲からの「早く、もっと多く」という無言のプレッシャーが和らぎ、時間の流れが緩やかになっています。午前中は体調を整える時間にあて、体調が良い午後に集中してパソコンに向かう。こうした「自分の自然な『バイオリズム』に基づいた働き方」を、地方の静かな環境は優しく受け入れてくれます。
「代わりがいない」という価値。地方でのひとりビジネスの強み
「人が少ない=仕事がない」と捉えられがちですが、視点を変えれば、そこはライバルのいない「ブルーオーシャン」です。都市部では何千人といるWebライターも、地方のあるコミュニティにおいては、たった一人の「頼れる専門家」になり得ます。
もちろん「Webならネット環境があれば全国各地から募集できる」と思われがちですが、地域に根差している取材仕事や、そこにいないとわからないこともあります。
「地域の“困った”に、ちょっと手を貸す」という働き方
都会の大きな会社を相手にするのではなく、まずは近所の小さなお店や、知り合いの事業主さんに目を向けてみる。地方には、デジタルが得意な人がいなくて困っている人がたくさんいます。たとえ週に数時間しか動けなくても、「あの人に頼めばなんとかしてくれる」という関係が作れれば、あなたはもう代わりのきかない大切な助っ人です。自尊心も保たれ、働き甲斐が生まれます。
データよりも「顔」でつながる安心感がある
地方のいいところは、お互いの事情を分かった上で仕事ができるところ。「体調が万全じゃないときは無理しないでね」と言い合えるような、人間味のある繋がりが生まれやすいところです。
マニュアル通りの契約ではなく、お互いの「ちょうどいい距離感」で支え合う。そんな働き方が、ここなら見つかるはずです。もちろん、法的にいい加減ということではありません。
経済的な厳しさは「『清貧』な暮らし」と「仕事の知恵」で乗り切る!

経済的な不安を抱えている場合、家賃や物価の高い都市部で「稼ぎ続けなければならない」という強迫観念は、症状を悪化させる大きな要因となります。
地方での暮らしは、この「稼がなければならない最低ライン」を劇的に下げてくれます。家賃を考えると都市部とは雲泥の差です。地方で働くことで、「生活の必要経費」を下げることができます。
固定費を下げて心に余裕を持たせられる
住居費を抑えられる地方では、無理にフルタイムで働いて心身を壊すリスクを冒す必要がなくなります。フリーランスで働く場合も、場所を問わない仕事ならば、稼働時間を減らせ、その分自分の時間を持てるはずです。
収入が少なくとも支出が少なければ、家計のバランスは保たれます。「稼ぐ力」を伸ばすことと同じくらい、「支出を減らせる環境」は、経済的困難を乗り越えるための重要な柱です。
経営実務的な知識が生活を守る
ここで重要になるのが、確定申告や家事按分といった実務的な知識です。地方にある自宅を仕事場とする「ひとりビジネス」では、家賃や通信費、光熱費の一部を経費として適切に計上することで、節税できます(脱税にならないよう詳細は税務署や税理士にご確認ください)。
こうしたビジネス実務の知恵を持つことは、地方で小さく、かつ堅実に生き抜くための強力な武器となります。
「ひとり時間」を「豊かな時間」に変え、デジタルで社会とつながる

「地方のひとりビジネスは寂しいのではないか」という懸念もあるでしょう。しかし、今の時代、物理的な距離は心の距離を縛りません。
オンラインで「アライ(支援者)」とつながる
SNSやオンラインコミュニティを活用すれば、たとえ周囲に理解者が少なくても、世界中に散らばる「同じ背景を持つ仲間」や、自分を支えてくれる「アライ」と繋がることができます。
※「アライ(Ally)」とは、英語で「同盟、味方」を意味する言葉で、主にLGBTQ+(性的マイノリティ)を理解し、支援する立場を明確にしている人のことを指します。
最近では、LGBTQ+に限らず、さまざまな社会的マイノリティに対して「良き理解者として共に行動する人」という意味でも広く使われるようになっています。
むしろ、外の世界との繋がりをデジタルに限定することで、自分のエネルギーを奪う煩わしい人間関係から距離を置き、必要なときに必要な分だけ社会と関わることができます。
地域の「静けさ」をクリエイティブエネルギーの源泉にできる
人が少なく、自然に近い環境は、深い思考や創作活動に最適です。窓の外に広がる風景や、季節の移ろいを感じながら、自分にしか書けない言葉を綴り、自分にしかできない仕事を形にできます。
この「豊かな孤独」は、病気やさまざまな困難を抱えてきたからこそ持てる、あなただけの繊細な感性を研ぎ澄ませてくれるはずです。
地方での「ひとりビジネス」は都会の喧騒からみなさんを豊かにできます
「病気があるから」「経済的に苦しいから」と何かを諦めて、都市部の冷たい風にさらされ続ける必要はありません。
パソコン1台を携えて、穏やかな地方に身を置く。そこで自分のリズムを守りながら、無理のない範囲で社会に価値を還元していく。それは決して「隠居」や「逃げ」ではなく、自分自身の人生を最大限に尊重した、最も自律的で多様な生き方の一つです。 人が少ないからこそ、あなたの存在感は増し、あなたの歩むスピードがその場所の正解になります。地方の広大な余白を、あなたの個性を描き出すキャンバスに変えていきましょう。穏やかに生きるという選択肢は、もうあなたの目の前に開かれています。

