新しい土地で、新しい生活をスタートするための引っ越し。本来であれば、期待に胸を膨らませて楽しみたいものです。しかし、日本で暮らす多くの外国人にとって、引っ越しには大きな不安が付きまといます。
生活を営む上で欠かせない衣食住。本記事では「住」に焦点を当て、外国人が住まいを探す際に直面する困難と、必要なサポートについて紹介します。
「外国人だから」という理由で入居を断られる
外国人の住まい探しで最初にぶつかる壁は、「入居拒否」です。希望の家賃や立地に合う物件が見つかっても、国籍を理由に断られるケースが後を絶ちません。
住居探しの経験がある外国人のうち、約4割もの人が「外国人であること」を理由に入居を断られた経験を持っています。
国籍を理由に入居を拒否することは、裁判で違法と判断された例もあります。その判例では、外国人の入居を拒否した家主に対して損害賠償が命じられました。それでも、不動産屋で門前払いのような扱いを受けるケースや、内見した後に国籍を知った物件のオーナーが入居を拒否するケースが横行しています。
また、国籍を理由に断られなかったとしても、「日本人の保証人がいない」「日本在住の緊急連絡先がない」ことを理由に断られることもあります。こういった困難も、約4割の外国人が経験しています。
さらに、「外国人お断り」と書かれた物件情報を目にして、断られる前に諦めた、という悲しい声もあります。このように、数字には顕在化していないケースも多くあるようです。
入居拒否が生む疎外感
ある調査によると、入居を拒否する家主の40%が、「コミュニケーションや文化の違いに不安がある」ことを理由に挙げています。一方で、実際に外国人入居者によるトラブルを経験した家主は1.5%にとどまりました。「外国人はトラブルを起こすもの」という偏見が差別を引き起こしているのです。
入居を拒否された外国人は、「自分は日本で暮らすことを歓迎されていない」といった疎外感を抱きます。さらには、「厄介者と決めつけられている」といった劣等感が生じるかもしれません。
日本を選んで来てくれた外国人が、このような負の感情を抱かず、新しい生活のスタートを切るためのサポートが求められています。

入居が決まったあとも続く困難
入居が決まれば一安心、とはなりません。次に待っているのは、契約や手続きのハードルです。
賃貸借契約書や重要事項説明には専門用語が多く、母国語ではない言語で正確に理解することは容易ではありません。難しい契約文は、日本語ネイティブでも億劫に感じるものです。十分に理解しないまま署名してしまうと、退去時の費用負担や解約条件でトラブルになることもあります。
また、引っ越し後には役所の手続きも集中します。市区町村をまたぐ場合は転出届と転入届が必要で、さらに外国人住民は在留カードの住居地変更も必要です。必要書類や案内窓口は自治体ごとに異なり、情報も日本語が中心になりがちです。
さらに、電気・ガス・水道・インターネット・携帯電話など、生活を立ち上げるためのライフラインも契約する必要があります。
引っ越し後の不安を減らすには、手続きを時系列で整理したチェックリストや、多言語での説明導線が不可欠です。
外国人の部屋探しをサポートする取り組み
このような困難に対して、前向きなサポートの動きもあります。
例えば、LIFULL HOME’Sの「FRIENDLY DOOR」では、外国語対応が可能な不動産屋を地域別に探せるページが公開されています。
外国人が母国語で相談できる環境にアクセスできることは、物件探しへの納得感や安心感に直結します。
また、日本賃貸住宅管理協会は、国土交通省と連携して「外国人入居円滑化支援」を進めています。14言語のガイドブック、契約関連の書式、家主向けの受け入れ実務ガイドなど、入居前から退去時まで頼れる情報が多言語で公開されています。
こうした取り組みは、外国人のためになるだけではありません。家主や管理会社が外国人入居者を迎える際の不安を減らし、説明不足によるトラブルを防ぐための実務的な支えにもなります。
支援のポイントは、必要な情報を「分かる形」で届けることです。やさしい日本語で伝える、多言語の補助資料を用意する、相談先を明確にする。こうした積み重ねが、住まい探しの不安を確実に減らしていきます。
当たり前に「住める」社会へ
外国人の引っ越しに伴う困難は、個人の努力だけでは解決できないものも多いのが現状です。だからこそ、情報提供のあり方や地域の受け止め方を少しずつ整えていくことが重要です。 住まいは、生きることの土台です。当たり前に住める環境を広げていくことで、誰もが安心して暮らせる国になっていくはずです。
参考資料
- 賃貸人は、入居者が日本国籍でないとの理由で賃貸借契約を拒むことができるか。(公益財団法人 不動産流通推進センター)
- 今も残る『外国人に部屋を貸したくない』。偏見と闘う不動産会社や外国人スタッフに現場のリアルを聞いた(suumoジャーナル)

