近年、日本各地で広がりを見せているパートナーシップ制度は、同性カップルや事実婚カップルなど、法律上の婚姻関係にない2人の関係を公的に認める取り組みです。法的効力こそありませんが、医療や住宅契約、企業の福利厚生などで家族同等の扱いを受けられる可能性があり、当事者にとって大きな支えとなっています。2015年の渋谷区・世田谷区での導入を皮切りに全国へと広がり、現在では人口の約7割が利用可能な環境になっています。
この記事では、パートナーシップ制度の概要、利用できるメリットや限界、具体的な申請の流れまで、最新情報をもとにわかりやすく解説します。
日本のパートナーシップ制度とは?

パートナーシップ制度とは、自治体が同性カップルや事実婚カップルを「婚姻に相当する関係」として公的に認める仕組みです。法的婚姻とは異なり、相続や税制上の権利は付与されませんが、証明書や受領証を提示することで医療や住宅契約などで家族同等の扱いを受けられる場合があります。
導入の経緯と現状
日本で最初にパートナーシップ制度が制定されたのは2015年11月、東京都渋谷区と世田谷区でした。渋谷区は条例に基づく「パートナーシップ証明制度」を施行し、住民票や身分証の提示によって証明書を発行します。世田谷区も同日に要綱に基づく制度を開始し、自治体として同性カップルの権利尊重を打ち出しました。
その後、制度は全国に広がり、2025年時点で導入自治体は500を超え、人口カバー率は9割以上に達しています。近年では、自治体間で相互利用が可能な「パートナーシップ制度自治体間連携ネットワーク」も整備され、引っ越しによる不利益の軽減が図られています。
対象となるカップル
パートナーシップ制度の対象は、同性カップルが中心ですが、多くの自治体では事実婚の異性カップルやトランスジェンダーを含む多様な性のカップルも対象としています。基本的には成人であること、双方が独身であること、少なくとも一方が当該自治体に住所を有していることが条件です。
また、制度は性的指向や性自認に関わらず、婚姻制度の枠外にある関係性を尊重する意図がありますが、対象範囲や申請に必要な書類は自治体ごとに異なるため、事前確認が必須です。
日本のパートナーシップ制度を利用するメリット

パートナーシップ制度の効果は法的婚姻ほど強くはありませんが、自治体によっては生活の中で大きな支えになります。まず、医療機関での面会や病状説明において、証明書の提示により「家族同等」として対応してもらえる場合があります。また、民間住宅の契約で「同性カップル不可」という条件を回避できたり、公営住宅の入居申込で夫婦と同等に扱われたりする自治体もあります。
さらに、企業によっては慶弔休暇・家族手当・保険加入など福利厚生の対象としてパートナーを認めるケースも増えています。ただし、これらの対応は全国一律ではなく、自治体や提携先企業の方針によって異なります。そのため、利用前に自分の住む地域や関係先での具体的な適用範囲を確認しましょう。
日本のパートナーシップ制度の限界・注意点

日本のパートナーシップ制度の限界は、法的効力がないことです。制度を利用しても相続権や配偶者控除などの税制優遇は得られず、戸籍にも婚姻関係として記載されません。また、対象範囲や申請要件は自治体によって異なります。例えば、同居が条件の自治体もあれば、別居でも申請可能な自治体もあります。
さらに、現住所の自治体が未導入の場合、制度を利用できません。他自治体に引っ越すと証明が失効するケースもあり、継続利用にはネットワーク参加自治体同士の移動が望ましいです。また、企業や医療機関による対応も統一されておらず、証明書を提示しても必ずしも家族同等の扱いを受けられるわけではありません。制度を過信せず、適用範囲を理解した上で利用する必要があります。
日本のパートナーシップ制度を利用する流れ
申請は原則として居住する自治体で行います。まず、住民票・独身証明書または戸籍抄本、本人確認書類など必要書類を揃え、自治体窓口に予約を入れます。申請当日は、担当職員の前でパートナーシップ関係にあることを宣誓し、書類を提出しましょう。審査後、証明書または受領証が交付されます。
多くの自治体では即日または数日以内に発行されますが、事前予約や書類準備に時間がかかる場合があるため、計画的な申請が必要です。
制度をきっかけに多様な家族のかたちが広がる
パートナーシップ制度は法的婚姻の代替ではありませんが、多様な家族の存在を社会に示す重要な一歩です。制度を活用しながら、法改正や社会理解の促進につなげることで、誰もが安心して関係を築ける社会に近づくでしょう。