近年、恋愛感情や性的関係を前提としない「友情結婚」や「契約結婚」が注目を集めています。「恋愛結婚だけが結婚の形ではない」「自分らしい人生を歩みたい」という方も多いのではないでしょうか。本記事では、従来の結婚観とは異なる新しい選択肢から、結婚制度が抱える課題まで詳しく解説します。
友情・契約結婚という選択肢

恋愛感情を前提としない結婚形態として、友情結婚や契約結婚が現代社会で注目されています。本章では友情結婚・契約結婚の選択肢の特徴について解説します。
恋愛を前提にしない結婚が増えている背景
現代社会では、個人の価値観が多様化し、恋愛至上主義に疑問を持つ人々が増加しています。
特にアセクシャルやアロマンティックなどのセクシャルマイノリティにとって、恋愛感情を前提とした結婚は大きな負担となり得ます。また、その他のマイノリティ同士が恋愛を前提とせず、共同生活のために友情結婚を選ぶケースもあります。
同居・扶養・子育てなどを分担する”生活のための結婚”
友情結婚・契約結婚では、感情的な結びつきよりも実用的な生活の共有に重点が置かれます。
- 住居費の分担
- 家事の役割分担
- 将来の介護や扶養の相互支援
- 育児
など、生活上の利益追求が主な目的です。
パートナーシップよりも法的安定を求める人たち
結婚制度には、配偶者控除、相続権、医療における意思決定権など、数多くの法的メリットが存在します。これらの法的保護を得ることを主目的として結婚を選択する人々が増加しています。
特に高齢化社会において、将来の介護や医療に関する権限を信頼できる相手に委ねたいと考える人々にとって、法的な夫婦関係は重要です。
同性婚と「法律上の壁」

同性カップルにとって、日本の現行法は大きな障壁です。
国際的な動向と比較すると、日本の法制度は大きく立ち遅れており、人権の観点からも深刻な問題です。以下では同性カップルが直面する法的制約について詳しく検討していきます。
世界的には進む同性婚、日本はまだ法制度が未整備
オランダが2001年に世界初の同性婚法制化を実現して以降、欧米諸国を中心に法整備が急速に進展し、2024年時点で世界35か国以上が同性婚を法的に認めています。
一方、日本では憲法第24条が「婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し」と規定していることから、政府は同性婚を認める法的根拠がないとの立場を取っています。
一部自治体でパートナーシップ制度が導入されているものの、法的効力には限界があります。
結婚の権利がないことによる不利益
法的結婚が認められないカップルは、深刻な不利益を被っています。
税制上の優遇措置を受けられず、相続権も認められていません。さらに医療現場では家族として認識されないため、重要な医療判断に参加できない場合があります。
経済的負担の増大だけでなく、精神的な苦痛をもたらしています。
「結婚したい人が結婚できない」問題の根深さ
同性婚が認められない現状は、個人の尊厳と幸福追求権に関わる根本的な人権問題です。
愛する人と法的な結びつきを得たい人々の希望が、制度的制約によって阻まれている状況は看過できません。
この問題の根深さは、単なる法技術的な問題を超えて、社会全体の価値観や多様性への理解に関わります。法制度の改革だけでなく、社会意識の変革も同時に求められています。
結婚しない自由と、結婚制度そのものへの問い

現代社会では「結婚しない自由」を選択する人々も増加しており、結婚制度そのものの意義が問われています。
結婚制度が特定の価値観に基づいて設計されていることへの疑問も提起されており、より包括的で柔軟な制度設計が求められています。
「生涯独身」を選ぶ人の背景
生涯独身を選択する人々の背景は多様です。キャリアに専念したい、個人の自由を重視したい、経済的な理由など、それぞれが自分の価値観に基づいて判断しています。
また、従来の結婚制度に魅力を感じない、異性愛規範に疑問を持つ、子どもを持ちたくないなど、制度的な制約から距離を置きたい人々も存在します。
これらの選択は、個人の自立と多様性を重視する現代的な価値観の表れといえます。
婚姻制度が”異性愛・出産・扶養”に基づいて作られていること
現行の婚姻制度は、異性愛を前提とし、出産・育児・扶養を想定した設計されています。この前提は、現代の多様な家族形態や個人の価値観と必ずしも合致しません。
同性カップル、子どもを持たない夫婦、事実婚カップル、単身者など、従来の家族モデルに当てはまらない人々にとって、現行制度は排他的に機能する場合があります。
結婚制度を問い直す

友情結婚や契約結婚は、恋愛を前提としない新しい結婚の選択肢として注目されています。
実用性や法的安定性を重視するこれらの形態は、多様化する現代社会の価値観を反映していると言えるでしょう。
一方で、同性婚の法的未承認など、現行制度の制約も明らかになってきていることから、結婚制度そのものの見直しなど、すべての人が自分らしい人生を選択できる社会の実現が求められています。