クィアやLGBTQ+を題材にした作品は今日では様々な場所で見かけ、アート作品や映画など、芸術分野においても顕著になりつつあります。本記事では映像やアートを手段に、クィア/LGBTQ+ の経験と物語を公開するイベントをいくつか紹介します。上映会やギャラリー・展示会での出会いはあなたの人生を変えるかも。
第17回関西クィア映画祭 2025
関西地域で一定の存在感を持つ「関西クィア映画祭」。2年ぶりの開催は大阪・京都を会場として、国内外のクィア映画を多数上映します。第17回となる今回は日本と移民、レズビアン、パレスチナなどのイシューにも関係するクィア映画を全30本、上映予定。

「国内作品コンペティション」では全9作品が上映されます。観客の投票によって最優秀観客賞が決まります。プログラムは「国内トランス・クィア短編集」「国内クィア・レズビアン短編集」「国内ゲイ短編集」と3つに分けられています。

特集「日本と移民、そして植民地主義」では、いわゆる人種・ルーツへの差別やレイシズムに問いを投げかけるような作品が上映されます。
「多様性を!」 「インクルーシブ」と掲げていても、そこで想定されているのは”典型的な日本人”ばかりかもしれません。この特集では、フィリピンハーフのゲイが主役の2作品、在日朝鮮人のクィアが出演する1作品、フランスで在留申請する日本人クィアを描く作品、そして日本の入管の現実を描く1作品が上映されます。また、日本の植⺠地主義を象徴する、日本軍「慰安婦」問題を知るための展示も行います。


一般作品部門では、性分化疾患/インターセックスをテーマにした作品や友情と恋愛の違いに揺れる高校生を描いた⻘春映画、自分らしく生きる喜びと痛みを描く作品など、それぞれ国もテーマも異なる4作品が上映されます。どの日程も魅力的で選びがたいラインナップ、お見逃しなく。前売り券はHPから、当日券は残席がある場合の販売です。
【京都会場】
2025年11月/28日(金)、11/29(土)、11/30(日)
場所:ウィングス京都(京都市男女共同参画センター ウィングス京都)
住所:京都市中京区東洞院通六角下る御射山町 262 番地
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【大阪会場】
2025年12月5日(金)、12/6(土)、12/7(日)
場所:豊中すてっぷ(とよなか男女共同参画推進センター すてっぷ)
住所:大阪府豊中市玉井町 1 丁目 1 番 1-501 号
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Instagram: https://www.instagram.com/kqff_official/
Web site: https://kansai-qff.org/
Normal Screen 「道をつくる」
「道をつくる」は、東アジアなどのクィア・カルチャーを主題に据えつつ、複数世代をつなぐ視点を取り入れた上映・トークイベントです。
2023年には渋谷PARCO 9階の「GAKU」にて、「東アジアのクィアたち、つながるジェネレーションズ」を副題に台湾や韓国などのクィア作品の上映と対話を2日間に渡って実施しました。企画では、若い世代だけでなく、60代以上のクィアの語りや体験を問い直す取り組みも置かれており、「見えづらさ」と「時間の流れ」を交差させながら、世代間の架け橋をつくろうとする姿勢がイベントを通して伝わります。
次回は2026年の初め頃に「道をつくる 3 」として「HOME クィアx 東アジア」をテーマに上映やトークを予定。8月9日に行われたキックオフイベントでは東中野のplatform3で、今回のテーマやイベント内容の発表を行い、ゲストでドラァグ・クイーン/性教育パフォーマーのラビアナ・ラベイジャさんと物語をつくるワークショップも催されました。
詳細は公開前ですが、トークセッションでは「日系アメリカ人クィアの運動、拡張するホーム」「中国クィア女性の声、韓国若手作家の輪郭」などが催されます。
また、ZINEの企画では日本にいるLGBTQで東アジア出身の人たちから、ひとり1ページを募集してZINEを共同作成。内容は、文章/詩/イラストなど自由。匿名で参加も可能。B5サイズ30ページほどを予定しています。
「Normal Screen」
Instagram: https://www.instagram.com/normalscreen/
Web site: https://normalscreen.org/
Rainbow Reel Tokyo(レインボー・リール東京)
「Rainbow Reel Tokyo」はNPO法人レインボー・リール東京が運営する東京を拠点とする長寿のLGBTQ+映画祭(旧称 Tokyo International Lesbian & Gay Film Festival / TILGFF)。1992年にスタートし、以来日本のクィア映像文化を支えてきた存在です。

第32回となった2025年は、6月21〜22日(渋谷ユーロライブ)および 7月12〜13日(東京ウィメンズプラザホール)に開催されました。国内外の多様な LGBTQ+映画をセレクトし、コミュニティと作品を結びつける機会を提供しました。

映画祭では、観客投票による「レインボー・リール賞(Grand Prix)」なども存在し、日本語短編映画の支援制度としての役割も担ってきました。
映画祭としての歴史の重みと、ボランティア運営を基盤とした草の根的な取り組みも魅力で、年を追うごとに「この時代の語り」を映像から掬い上げる場所になってきています。
「Rainbow Reel Tokyo」
Instagram: https://www.instagram.com/rainbowreeltokyo/
Web site: https://sites.google.com/view/rainbowreeltokyo
来年が待ち遠しい人へ
今回紹介した上映イベントやスペースはそれぞれ異なるアプローチと文脈を持ちつつも、クィア表現が持つ力を信じて、未来の声への道をつくろうとする実験の場になっています。
イベントが待ち遠しい方はぜひ、ボランティアへの応募や情報のシェアをするなど積極的に働きかけることで開催や企画をする人々へのモチベーションにも繋がり、クィアコミュニティ全体の支えにもなります。
映画祭・上映も、「問い」が重要な意味を持っています。私たちの声、問い直され続ける歴史、見えづらかった表現。これらの場所で観客はスクリーンや作品と出会いながら、自分の感性と世界を再発見し祝福する機会を手にします。
