前回の記事「新宿二丁目だけじゃない。東京のLGBTQ+フレンドリースペース」では、新宿二丁目だけではない東京のLGBTQ+フレンドリースペースの紹介を行いました。しかし、東京にはまだまだ共有できていないスペースがあります。第二弾となる今回もカフェや書店など様々な場所を紹介します。
足湯café & bar どん浴(新宿御苑・カフェ)
「足湯 × 飲食 × くつろぎ空間」という組み合わせがユニークな「足湯café & bar どん浴」は、木目調の内装で温かみのある雰囲気で「場所としての拠点性」を重視したカフェです。 夏季はかき氷、冬季はコタツ席が出るなど、季節性を取り入れた演出があるのも注目ポイント。

どん浴は誰でも訪れることができる開かれた場所として、セクシュアリティ・年齢・国籍を問わないオープンな空間づくりを目指しているカフェ・バーです。
店名の通り、特徴は足湯があること。ろ過機能付きの足湯をしながら飲食できるスタイルが特徴。 30席のうち足湯席は 2 区画(4名 ×2席)の他、ハンモック席やカウンター席もあります。足湯席はカーテンで仕切りが可能になっているのでプライベートな利用をしたい方にもおすすめできます。

どん浴はフードやドリンクも充実しています。人気メニューは「ローストビーフ丼」。 人気の秘訣は臭みのないお肉にローストビーフソースと白いラディッシュソース。しっかりそれぞれが絡んで美味しく、ローストビーフを普段食べない人からも好評とのこと。
その他、ヴィーガンチリコンカンやフレンチトースト、バインミーなどのフードやコーヒー、ラテ、カクテルやワインなどのドリンク・アルコールも豊富に取り揃えています。
「足湯café & bar どん浴」
住所: 東京都新宿区新宿2-7-3 ヴェラハイツ新宿御苑203
アクセス: 新宿三丁目駅 C5 出口から徒歩約3分、新宿御苑前駅 1出口から徒歩約5分程度。
営業時間: 14:00~22:00(料理 L.O 21:30/ドリンク L.O 21:30)
定休日: 火曜
---
Instagram: https://www.instagram.com/donyoku2018/
Web: https://donyoku.tokyo/
boundary books(東新宿・ブックストア)
「boundary books」は、東新宿・団子坂にあるゲイ・クィアアートをメインに扱う書店。特に、男性表象をテーマにした国内外の雑誌、写真集、漫画、ZINE、雑貨などが取り揃えられています。 2023年5月にウェブストアとして「boundary books」を開始し、その後、2024年に実店舗として オープンしました。

特徴としては扱うものの種類とborderless性にあります。コンパクトなスペースには書籍、アートブック、写真やZINEなど多様な作品が並んでおり、例えば「The Little Black Gallery」によるクィアやゲイの芸術写真の促進プログラム、『BOYS! BOYS! BOYS!』のクィアとゲイのファインアート写真に特化した世界初の写真雑誌や、2001年にアムステルダム創刊で世界中のクィアカルチャーをフィーチャーする場として人気を誇る『BUTT』など雑誌やベルギー、香港や台湾などの東アジアのアーティストの作品まで豊富に扱っています。
前回記事にて紹介した「platform3(東中野)」とはジャンルこそ似ているものの、キュレーションや世界観など、そこには全く異なる魅力があります。
TOKYO ART BOOK FAIRや「flotsam books(代田橋)」企画のZINES FAIR at CP+などにも参加・出展するほか、今年の11月にはboundary booksからインディペンデントマガジンの『輪郭』創刊号を11月2日に刊行、発売予定。また、発売を記念し、同日15:00-21:00に下北沢 BONUS TRACK HOUSE にてローンチイベントを開催します。
「boundary books」
住所: 東京都新宿区新宿7丁目2-1 学友社ビル1階
アクセス: 東新宿駅より徒歩8分 若松河田駅より徒歩10分
営業時間: 13:00 - 21:00
営業日: 土曜日のみ(週1回)
---
Instagram: https://www.instagram.com/boundary__books/
Web: https://boundary-books.square.site/page
Queer t0pia(場所不定・イベント、パーティー)
Queer t0pia(読み方はクィアトピア)は「東京のクィアなユートピア」を実践する場所としてDJ、ドラァグパフォーマンスやファッションショーなどより柔軟な形でクィアと表現を結びつけるような実験的で自由なraveイベントです。

月ごとに開催される本イベントは、アーティスト、ダンサー、クラフト作家、その他クリエイターたちの集いであり、あらゆるマイノリティコミュニティのための安全な場として機能しています。初回はクィアコミュニティによりDJが親しみやすくなるようにとファウンダーであり、日印系DJ、ファッションデザイナーでもあるFreakynorikyによるDJワークショップが開かれました。
ニューヨーク、台北などのコミュニティ、DJともコラボレーションイベントを開催しており、国やジェンダーにオープンなのもQueer t0piaの特徴の1つ。
また、年に2回、ファッションショーを開催しており、東京をはじめ、国内外のデザイナーの方々とコラボレーションもしています。
プロ/アマチュア関係なくデザイナーやクリエイターがショーとしてイベント内で作品を披露できるだけでなく、作品自体を販売する機会も開かれているため、イベントに来た参加者は独創的な服やアクセサリーを手にいれて身につけることもできます。
主催と観客といった二元的な構造からよりクリエイティブな方面にクィア性を帯びていくことでその境界は融解し、全員がより創造的に音楽やファッション、アートを楽しむことができる。それらを体現しているのがQueer t0piaです。

「Queer t0pia」
開催場所: 不定 (Instagramをご覧ください。)
---
Instagram: https://www.instagram.com/queert0pia/
タコシェ(ブックストア・中野)
「タコシェ」は、東京都中野区中野ブロードウェイ3階に位置するサブカルチャー系書店です。創業は1993年、もともとは漫画雑誌『ガロ』のアンテナショップとしてオープンしました。その後は自主制作本・ミニコミ中心のセレクト書店として独創的な道を創ってきました。

大きな看板を掲げる “友沢ミミヨ” による手描きイラストもタコシェのシンボル的存在で、通行人の足を止める目印になっています。タコシェの大きな魅力は「流通しにくい表現」を取り扱う「量」にあります。ZINE・リトルプレス・私家本・限定本など、自主制作作品を重視して取り扱っています。
書店としての歴史や流通しにくいものを扱う方法、そして中野という場所もあり、海外からの作品も多く、フランス・台湾・ラトビア・イタリアなど各国のアーティストの ZINE やアートブックも並んでいます。特に、香港の学生運動を扱ったZINEのような政治的・当事者的視点を持つ刊行物が加わることもあるようです。

タコシェはLGBTQ+専門書店ではありませんが、この「流通しにくい表現」を扱い続けてきたという部分からクィア書籍やZINE、アート作品が多く並んでいます。これは大手書店や独立書店でも扱いのないマイノリティーやコミュニティの声や記録を見つけることも。また、店内では時折、壁面やスペースを使った展示やイベントを行っており、作品の発表+コミュニケーションの拠点にもなっています。過去にクィア作品の展示が行われたこともあり、こうした実践がクィア文化の可視化にもつながると考えられます。 クィアの書籍や作品はオンラインからも購入可能です。
「タコシェ」
住所: 東京都中野区中野5-52-15 中野ブロードウェイ3F
アクセス: JR中野駅から徒歩4分
営業時間: 12:00〜20:00
定休日: 水曜日
---
Instagram: https://www.instagram.com/taco_che/
Web: http://tacoche.com/
利用が支援につながる
インターネットが便利になった時代、欲しいものはオンラインですぐに買うことができ、飲食に関しても身近なチェーン店であれば最低限のサービスは受けられるかもしれません。しかし、その選択を考え直すことでこれまで紹介したLGBTQ+フレンドリーやクィアにまつわるものや事柄を扱う人やコミュニティ、店にとっては重要な支援になりうることもまた、利用者として考えたいこと。
あえて実店舗で買うことでその店の利用者と繋がったりキャンペーンやイベントからより広いイシューを知るきっかけになったり。店を利用することでその店の持続的な営業を支えることもできます。
お店や人との出会いは、単なる消費を超えたつながりや共感を生み出します。小さな行動の積み重ねが、コミュニティの未来を少しずつ形づくっていく -そんな思いを胸に、自分の「好き」や「共感」を支援という形に変えられると個人としても、コミュニティとしてもより良い方向に向かっていくはずです。


