もし、愛する人と一緒に生きていくと決めたとき、それが性別の違いによって認められないとしたら…。そう考えるだけで胸が痛む話です。
世界の多くの国では、同性婚やパートナーシップ制度が法的に認められ、性別に関係なく「結婚」という形で人生を共に歩むことができます。けれど、日本ではまだ同性同士の結婚は法律上認められておらず、一部の自治体によるパートナーシップ制度にとどまっています。
なぜ日本だけが立ち止まっているのか。その理由を知ることは、誰もが幸せに過ごせるようになるための、私たち一人が考えなければならない大切なテーマです。この記事では、日本ではなぜ同性婚が認められていないのか、世界の現状と比べながら、全ての人が自分らしく幸せを選べる未来について考えていきます。
日本で同性婚が認められていないのはなぜ?

日本の現状
日本では、同性婚は法律上認められていません。その根拠としてよく挙げられるのが、日本国憲法第24条1項にある「婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない」と記されていることです。
自治体レベルでは北海道札幌市から沖縄県那覇市までパートナーシップ制度が広がりつつあり、証明書を発行する地域も増えています。しかし、この制度には法的効力がなく、相続や社会保障など婚姻で認められる権利は保障されません。
最近では、一部の企業で住宅契約などで婚姻と同等に扱う動きも増えてきましたが、全国的な制度には至っていないのが現状です。
なぜ認められていないのか?
日本で同性婚が認められていない理由には、法律やその解釈が大きく関わっています。
まず、民法や戸籍法では婚姻の性別を明記していないものの、「夫婦」という言葉が多く使われており、男女による結婚を前提とした規定になっている点です。政府も2018年5月の閣議決定で、「夫婦とは男性である夫と女性である妻を指すため、同性婚の届け出は受理できない」と明言しています。実際、戸籍上の性別が同じ2人が婚姻届を提出しても「不適法」とされ受理されません。
さらに、日本国憲法第24条の「両性の合意」という表現も、制定当時は同性婚という発想がなかったため、多くの場合「両性=男女」と解釈されてきました。このような条文表現や解釈が、制度化を妨げる要因となっています。
世界におけるLGBTQの結婚事情

世界を見渡すと、各国の制度は大きく3つに分けられます。1つ目は同性婚を法的に認めている国、2つ目は結婚ではないが登録パートナーシップを認めている国、そして3つ目は同性愛自体を違法とする国です。
同性婚を法的に認めている国
同性婚を認めている国は、2025年時点で39か国にのぼります。
2001年にオランダが世界で初めて合法化して以来、ベルギー、カナダ、スペイン、フランス、アメリカ、オーストラリア、台湾など、ヨーロッパや南北アメリカを中心に広がりました。台湾は、アジアで初めて同性婚を認めた国で、「司法院釈字第748号解釈施行法」、通称「同性婚を認める特別法」が施行され、アジアで初めて同性婚が合法化されています。
同性婚の制度がある国では、相続や社会保障など異性婚と同じ法的保護が受けられます。
登録パートナーシップ制度を導入している国
次に、結婚制度ではないものの、登録パートナーシップ制度を導入している国があります。具体的には、アンドラ、イスラエル、イタリア、エクアドル、キプロス、ギリシャ、クロアチア、コロンビア、スイス、スロベニア、チェコ、チリ、ハンガリー、ベネズエラ、ベルギー、メキシコ(州によって導入)、リヒテンシュタインなど17か国が該当します。
登録パートナーシップとは、婚姻に近い形でカップル関係を公的に認める制度です。ただし、国によって認められる権利には差があり、税制優遇や養子縁組など一部の権利は付与されない場合があります。フランスのように、同性婚と登録パートナーシップの両方を選べる国もあります。
同性愛が違法の国
一方で、同性愛そのものが違法とされる国も少なくありません。その数は70か国以上にのぼり、中にはモーリタニアやサウジアラビア・イエメン・スーダンなど、死刑が科される可能性のある国も存在します。日本では考えられないような厳しい判決ですね。
こうした厳しい法律の背景には、植民地時代の刑法の名残や、宗教上の戒律があります。特にイスラム法では、同棲愛自体は否定されていないのですが、ソドミーが禁じられているために、厳罰の対象となってしまう国もそんざいしています。
このように、世界の制度や社会的立場は国や地域によって大きく異なります。同性婚を認める国が着実に増えている一方で、依然として深い溝があるのが現実です。
全ての人が幸せになれる世の中へ

世界には、性別に関係なく結婚の権利を認める国が増えてきています。その一方で、同性愛が違法とされる国も存在し、日本もまだ同性婚を法的に認めていません。こうした現状は、制度や法律の問題だけではなく、社会全体の意識や文化とも深く関わっています。
結婚は、愛する人と人生を共にするというごく自然な願いです。それが性別によって制限される社会は、本当にすべての人にとって平等と言えるのでしょうか。
世論調査では多くの人が同性婚に賛成しているにもかかわらず、制度化が進まないのは、政治的課題や国民の行動力不足も一因です。小さな関心を持つこと、身近な人と話題にすること、選挙で意思を示すこと──それらはすべて、社会を少しずつ変えていく力になります。
世界の動きに目を向けながら、日本でもすべての人が自分らしく生き、愛する人と幸せを築ける未来を目指していける世の中にしていきたいものです。

