「LGBT」や「多様性」などの言葉をよく耳にするけれど、具体的にどのような意味があるのか疑問を持っている方もいるのではないでしょうか。
誰もが自分らしい生き方ができる社会になるためには、当事者ではない人たちの「知ろうとする意識」が大切です。ここでは、「LGBTQ+」の意味や「Q」が重要視されている理由を解説します。
LGBTとは?LGBTQ+との違い
LGBTは、性的少数者(セクシャルマイノリティ)の総称です。それぞれのアルファベットには当事者を表す意味が込められており、近年では多様性をより正しく表現するために「LGBTQ+」という名称にアップデートされています。
LGBTそれぞれの意味
まずは、LGBTそれぞれのアルファベットの読み方と意味をみてみましょう。
| 読み方 | 言葉の意味 | |
| L(Lesbian) | レズビアン | 女性の同性愛者 |
| G(Gay) | ゲイ | 男性の同性愛者 |
| B(Bisexual) | バイセクシャル | 両性愛者 |
| T(Trans) | トランスジェンダー | 生まれたときに診断された性別にとらわれない性別のあり方を持つ人 |
セクシャルマイノリティには、大きく分けて「誰を好きになるのか」という性的指向と「身体と心の性が一致しているのか」という性自認があります。当事者の多くは、社会の理解不足によって、家族や友人などにもカミングアウトできず、学校や職場で偏見や差別に一人で苦しむことも少なくありません。
まずは基本的な言葉の意味を知ることで、誰もが安心して暮らせる社会づくりに貢献できます。
「LGBT」が「LGBTQ+」と呼ばれるようになった背景
セクシャルマイノリティの当事者たちは、レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダーだけではないため「LGBT」という言葉ではすべてを表現できません。そこで「+」を取り入れることで、次のようなアイデンティティを持つ人たちも包括的に表現できるようになりました。
- アセクシャル:恋愛感情・性的欲求を抱かない
- インターセックス:生まれつき男女それぞれの身体的特徴を持っている
- ノンバイナリー:性自認が男性・女性の二分法に当てはまらない・または両方当てはまる
- トゥー・スピット:伝統的に二つの性の役割を持っている(北米先住民の文化)
このようにセクシャリマイノリティの在り方は多様であり、誰もが社会で差別や偏見に悩むことなく暮らす権利を持っています。誰一人として「社会に取り残されている」という疎外感を抱かなくて済むよう、LGBTQ+という呼び方のほうが適切だという考えが浸透しているのが現状です。
「Q」に込められた意味

LGBTQ+の「Q」には、大きく分けて2つの意味があります。2つの意味とそれぞれの違いをみていきましょう。
「Q」の意味① : Queer(クィア)
Queer(クィア)は、英語で「奇妙な」「不思議な」「風変わりな」などネガティブなニュアンスがあり、以前は英語圏で同性愛者を差別する言葉として使われていました。1990年代以降、セクシャルマイノリティの当事者たちが自らを「クィア」と呼ぶことで自らのアイデンティティを肯定し、ポジティブな意味へと昇華しました。現在では、同性愛者に限らずトランスジェンダーやノンバイナリーなど多様なセクシャルマイノリティの人たちの連帯を象徴する総称として広く認知されています。
「Q」の意味② : Questioning(クエスチョニング)
Questioning(クエスチョニング)は、「性的指向(誰を好きになるのか)」や「性自認(身体と心の性が一致しているのか)」がはっきりと分かっていない、もしくはあえて決めない状態を指しています。
- 自分の性的指向と性自認を模索中である
- 男や女、LGBT+など既存の枠組みに当てはまっていないと感じる
- 「自分が何者かわからない」という状態が、むしろ自然で安心できる
このような考えに当てはまる場合、クエスチョニングに該当するのかもしれません。クエスチョニングから自分に最適な枠組みを見つける人もいれば、そのままどこにも属さない在り方を選ぶ人もいます。
「Queer(クィア)」と「Questioning(クエスチョニング)」の違い
「Q」の意味を持つクィアとクエスチョニングは、次のように区別できます。
- クィア:セクシャルマイノリティのアイデンティティを表す言葉
- クエスチョニング:自分の性的指向や性自認を模索している状態を表す言葉
クィアは、既存の枠組みに収まることなくセクシャルマイノリティとしてポジティブに自己表現する立場を示します。一方でクエスチョニングは、アイデンティティの模索・探求のプロセス段階を指すものです。
異なる意味を持つ両者ですが、LGBTQ+に「Q」が含まれることで、自分のアイデンティティを模索している人や既存の枠組みに収まらない生き方を選ぶ人たちを含めた、より包括的な言葉として確立されます。
日本国内での「Q」の認知度と課題
日本国内で実施されたLGBTQ+調査によると「Q(ここではクエスチョニングに限定)」の認知度は低く、LGBTの用語と比べると大きな差があることがわかります。

レズビアン、ゲイ、バイセクシャルなどは約90%の人たちが意味まで理解しているのに対して、クエスチョニングを知っている人はわずか9.6%という結果となりました。一方で、LGBTQ+の「+」に含まれるアセクシャルやパンセクシャルよりは知られているのは意外な結果ともいえます。
また、自分自身をクエスチョニングに当てはまると回答している人たちも一定数います。
- 性自認のクエスチョニングに当てはまる人:0.62%
- 性的指向のクエスチョニングに当てはまる人:1.63%
割合としては高くありませんが、認知度の低さに対して自分自身をクエスチョニングに位置付けしている人が少なからず存在するという結果となりました。今後、日本国内で多様性やLGBTQ+に関する教育や議論が活発化することで、認知度が高まることが予測されます。
LGBTQ+で「Q」が重要視されている理由

Q(クエスチョニング)は、ほかのLGBTQ+の文字とは明確な違いがあり、「既存の枠組みに収まらない」「アイデンティティを模索中」などを尊重する意味合いがあります。クエスチョニングが重視されることで、多様なアイデンティティが肯定されて誰も排除されない社会づくりを実現できます。
また、クエスチョニングは単に「アイデンティティに迷っている状態」ではなく、自己探求のプロセスとして健全であるという教えでもあります。実際に英語圏の心理学サイトVerywell midでは、クエスチョニングをサポートする具合的なステップとして「Resources to Help Understand Your Sexual Orientation(自分の性的嗜好を理解するためのヒント)」というものを出しています。
| アイデンティティを見直す3つのステップ | やり方 |
| ①心が動く光景・理想を探す | 映画や写真などで様々なカップルや家族の形を見たとき、最も心が動かされるのはどのような関係性か探ってみましょう。 |
| ②心地よいパートナー像を想像する | 目を閉じて理想的なパートナーを想像したとき、相手がどの性別になるか問いてみましょう。 |
| ③既存の固定概念を切り離す | 「こうあるべき」「これが普通」という社会・文化の価値観を切り離したとき、自分が惹かれる人物像が変わるかどうかを確認してみましょう。 |
アイデンティティに疑問や不安を抱いている方は、ぜひ3つのステップを通じて自分自身と向き合ってみてください。自分自身のアイデンティティを模索することが目的ですので、すぐに答えがでなくても何も問題がないことを理解しておきましょう。
多様性の社会実現のためにはまず「知ること」から!
LGBTQ+の「Q」は、自分のアイデンティティを模索している人や既存の枠組みに収まらないあり方を選ぶ人を包括した大切な言葉です。日本国内の認知度はまだ低いですが、知ろうとする姿勢が大きな一歩になります。完璧に理解していなくても、少しずつ学びを重ねることで、誰もが生きやすい社会づくりを目指しましょう。

