近年では「LGBTQ+フレンドリー」という言葉が使われる機会が増えています。多様性を重視する動きが加速する一方で、依然としてLGBTQ+に対する偏見や差別が残っており、当事者の人たちが安心して暮らせる社会づくりは模索が続いている状況です。
この記事では、LGBT+フレンドリーについて解説したうえで、実際に採用されている事例を紹介します。
LGBTQ+フレンドリーとは

LGBTQ+フレンドリーとは、レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダー、クィア/クエスチョニングなどセクシャルマイノリティの人たちを尊重する姿勢を示す考え方です。企業や行政を中心に、民間サービスや教育の場面でも使われる機会が増えています。
LGBTQ+フレンドリーの定義
「LGBTQ+フレンドリー」には、セクシャルマイノリティの人たちを歓迎・受容する姿勢を示すだけではなく、差別や偏見を許さない立場を明確に表明する意味が込められています。性的指向(誰を好きになるのか)や性自認(身体と心の性が一致しているのか)に関わらず平等に評価・対応することを約束し、安心できる環境を整備する取り組みです。
職場やサービスにおいてLGBTQ+を掲げることで、当事者の社員やお客さんが「安全な場所」として認識して、利用しやすくなります。
LGBTQ+フレンドリーが使われるようになった背景
海外では1980年代から観光や教育など幅広い業界で「LGBTQ+フレンドリー」という言葉が使われていました。
日本で使われるようになったのは比較的最近で、2010年代頃とされています。SNSの普及で多様性への理解が深まったこと、インバウンド需要や東京オリンピックなどでグローバル基準が重視されるようになったことなどが背景にあります。
一方で、現在の日本では「多様性を尊重するブランド」というマーケティングの一環として使われていて、本質的な取り組みが伴っていないケースも少なくありません。これからは、表面的な取り組みにとどまることなく、LGBTQ+が持つ理念を理解・共感する姿勢が求められます。
LGBTQ+フレンドリーが使われる意義
「LGBTQ+フレンドリー」という言葉は、当事者を「歓迎する」「受け入れる」だけではなく、差別に対して断固反対する姿勢を社会に示すことに大きな意義があります。社内や自治体、サービス利用者の間で不適切な言動があった場合、然るべき措置を取ると明言していることになり、当事者にとって大きな安心感につながります。
本来であればこうした言葉がなくても安心して過ごせる環境が理想ですが、現状では「LGBTQ+フレンドリー」がその実現に向けた重要な役割を担っているのです。
LGBTQ+フレンドリーが採用されている実例

LGBTQ+フレンドリーを掲げることで、当事者を歓迎する意思、差別や偏見を許容しない姿勢を示すことにつながります。実際にどのような分野で使われているのか紹介します。
不動産・賃貸分野
不動産業界では、LGBTQ+の当事者たちが安心して生活できる物件や家づくりをサポートする企業が増えています。
同性カップルという理由だけで、賃貸物件の内見を断られたり保証人を認めてもらえなかったりするケースは珍しくありません。LGBTQ+フレンドリーの不動産会社を選ぶことで、同性カップルやパートナーシップ制度を利用している人たちでもスムーズに賃貸契約できる仕組みを利用できます。
また、LGBTQ+に関する社内教育も積極的に実施される傾向にあるので、偏見や差別を受けることなく接客してもらえます。
採用・職場環境
職場においても差別や偏見を許容しない取り組みが広がっています。厚生労働省は、正式に性的指向や性自認に基づく差別を明確に禁止し、LGBTQ+の概要や取り組みについてまとめており、誰でも閲覧可能です。
また、東京都の「LGBTフレンドリー宣言」では、セクシャルマイノリティの人たちでも働きやすい職場の環境づくりに努めている企業を一覧で紹介しています。国や自治体が主体的に差別や偏見に反対する姿勢は、LGBTQ+の当事者たちが不安を抱くことなくキャリア形成をするための後押しになります。
公共機関・行政サービス
各自治体でも、地域住民に対してLGBTQ+の理解と受容を促す活動をしています。
埼玉県では「県内での実態調査で約30人に1人がLGBTQ+に該当する」とアンケート結果を公表しており、県民に対して正しい知識を普及する発信をしています。また、LGBTQ+に関連する専門の相談窓口「にじいろ県民相談」を設置しており、当事者やその周りの人たちの不安や悩みに寄り添う環境が整備されました。
渋谷区では、2015年に日本初の同性パートナーシップ証明制度を導入し、誰もが生きやすい街づくりに取り組んでいます。
このように公共機関や行政が率先してLGBTQ+フレンドリーを体現することで、偏見や差別からの解放が期待できます。
観光・ホテル業
観光・ホテル業では、LGBTQ+の旅行客を歓迎するサービスが提供されています。従業員に対してLGBTQ+に関する正しい知識を身につけてもらうための研修が実施されていたり、差別や偏見を許さないポリシーを掲げていたりします。
リクルートは、LGBTQ+の当事者やカップルに向けて独自のプラン提供や情報発信を実施しており、旅行先で安心して滞在してもらえるようなサービスが展開されました。
インバウンド需要が増える現在、LGBTQ+フレンドリーを掲げることで、グローバル基準でのおもてなしを実現する動きが広がっています。
教育分野
LGBTQ+フレンドリーの取り組みは、教育分野でも普及しています。
早稲田大学では、ジェンダー・セクシュアリティ・センター(GSセンター)を設置し、LGBTQ+の学生の相談や啓発活動をおこなっています。大学が差別や偏見を許さないポリシーを掲げることで、性的指向や性自認を理由に教育を受ける機会を失うリスクを防ぐことが可能です。
また、教育現場で多様性を尊重する姿勢を学ぶことは、既存の枠組みに縛られない価値観を育み、豊かな感性を生み出すことにもつながります。
LGBTQ+フレンドリーで新たな価値創出を!
LGBTQ+フレンドリーは、セクシャルマイノリティを歓迎するだけではなく、差別や偏見を許さない姿勢を表明する重要な言葉です。日本国内では、企業や自治体、民間サービスなど幅広い分野で取り入れられ、誰もが安心できる環境づくりが進んでいます。
理念や目的を正しく理解して、新たな価値創出を生み出しましょう。