これまでのファッションは「メンズ」「レディース」と二元的に分類されがちでした。しかし、今日ではそれらの境界が揺らぎ、LGBTQ+コミュニティを中心に、服に性別を求めない、自由で自己表現豊かな服選びが広まっています。この記事では、性別を超えた装いの可能性と、それを具体的に実現するブランドを考察します。
ジェンダーレスとは何か。“見た目” と “自己”
日本の「ジェンダーレス系」は、性別の固定にとらわれない中性的なファッションスタイルとして、2010年代前半頃から徐々に知られていき、東京ガールズコレクション2015秋冬ファッションショーにジェンダーレスモデルが登場したことで急速に認知が拡大(※)。いわゆる“原宿系”ファッションはそれらの象徴とも言えるスタイルです。
原宿系はピンク、ラベンダー、パステルブルーなど「従来女性的とされてきた色」を男性が着たり、逆にワイドパンツやミリタリージャケットを女性が着ることも自然であり、オーバーサイズのパーカーやユニセックスな古着は、性別や体系に依存しないコーデが作りやすいため浸透していったといいます。
男性がメイクや髪色を楽しみ、ファッションで可愛さや華やかさを演出することが自然になり、「見た目」と「性的指向・アイデンティティ」を切り離すスタイルは現在進行中で変化し続けています。
この動きはファッションとしてのニュートラル性だけでなく、自己認識や内面の確立・表現の手段としても重要です。「服に性別はいらない」という問いには、「自分らしくあることの自由を取り戻す」という答えがあります。

世界のジェンダーレス・ノンバイナリーブランドの取り組み
ファッションブランドの最前線
・Charles Jeffrey LOVERBOY:スコットランド出身のデザイナー、チャールズ・ジェフリーによるブランド。パンクとロンドンのクィア・クラブ文化を背景に、性別の境界を壊したユニセックスなデザインで注目されています。SEVENTEENドギョムやLE SSERAFIMチェウォンなどのK-POPアーティストが特徴的なビーニーを衣装で用いたことから日本でも認知が広がった。
・Jeanne Friot:パリ・ファッションウィークで活躍する新人デザイナー。スローガン「No gender, nocarbon, no hatred(性別も炭素も憎しみもない)」を掲げ、フェザー付きジーンズやスローガンTシャツで、持続可能性とジェンダーの壁なくしたデザインを発信。
LGBTQ+に寄り添うブランドたち
・Diesel:2019年、初の“Pride”カプセルコレクションを発表。レインボーカラーのロゴやストライプ、レディース下着、Tシャツなど多岐にわたるアイテムが含まれ、売上の一部は「The StonewallInn Gives Back Initiative (SIGBI)」への寄付に充てられました。翌年、2020年には第2弾として“Francesca”というトランスジェンダー女性を主人公とするショートフィルムを公開。「Make Love Not Walls」キャンペーンでは、トランスジェンダーやクィアモデルを登用し、愛と連帯を象徴する映像で政治的メッセージを発信しました。

こうした多様性を押し出す方向性に舵を切ったことでフォロワーが一時1万人超離れるという事態も起きましたが、現在のクリエイティブディレクターであるグレン・マルテンスは、ブランドのDNAを活かし「個性、多様性、インクルーシビティ」を意識したキャンペーン作りを続けています。
・Official Rebrand、Telfar(ブラックLGBTQ+デザイナーによるブランド群代表)など、ジェンダーレスかつインクルーシブを掲げるブランドは、カルチャー面でも強い影響力を持っています。
日本のジェンダーレスファッション事情
また、Y’s by Yohji YamamotoやAMBUSH、Undercover などのストリート系ブランドも、ジェンダーレスなシルエットやカットを積極的に取り入れ、世界的トレンドと呼応しています。さらに、日本の性別色のないコスメラインも登場してます。iLLO Cosmetics や FIVEISM THREE、NALCといったブランドは、性別に偏らないビューティープロダクトを提供しています。

自分らしい服を纏うために。
「服に性別はいらない?」という問いは、単なるデザイン上の挑戦ではなく、個人の自己肯定と社会の変革にもつながる問いです。ジェンダーレスファッションは、“自分らしさ”を見つけ、祝福する文化を豊かにしてくれます。性別の枠を外し、自由に「私」を纏ってみませんか?
参考文献
※ Tokyo Fashion: "Genderless Kei - Japan's Hot New Fashion Trend."