アロマンティックやアセクシュアルは、恋愛をしない・性に興味がないといった特徴を持つセクシュアリティです。しかし、存在はまだ十分に理解されておらず、偏見や誤解も少なくありません。「恋愛しないなんて変」と思われることもありますが、実際には人それぞれの自然な感覚です。
この記事では、アロマンティックやアセクシュアルのそれぞれの定義や特徴、よくある誤解、恋愛や性にとらわれない生き方について解説します。
アロマンティックとアセクシュアルの違いとは?

アロマンティックとアセクシュアルは、どちらも恋愛や性的な関係に対して特定の傾向を持つセクシュアリティですが、その対象となる感情が異なります。アロマンティックは、恋愛感情を抱かない、もしくは非常に稀にしか恋愛感情を抱かない人を指します。一方、アセクシュアルは、他者に性的魅力を感じない人を意味します。
恋愛感情と性的魅力は似ているようで異なるものであり、この2つは必ずしもセットではありません。そのため、両方を併せ持つ人もいれば、どちらか一方だけという人もいます。
アロマンティックとは|恋愛感情がない
アロマンティックは、恋愛感情をほとんど、またはまったく抱かない人を指します。もちろん、友達がいない・人を好きになれないという意味ではなく、あくまで恋愛的な好意を感じにくいということです。アロマンティックであっても、友情・家族愛・仲間意識・深い信頼といった他の形の愛情を豊かに持つ人は当然いて、社会的なつながりを築くことに積極的な人もいます。また、恋愛をしないからといって孤独であるとは限らず、自分にとって心地よい人間関係を選んで築いていきます。
なお、アロマンティックは恋愛を必ず否定するわけではなく、状況や相手によって恋愛的な感情を持つこともありますが、その頻度や強さが一般的な恋愛観とは異なるのが特徴です。
アセクシュアルとは|性的魅力を感じない
アセクシュアルは、他者に対して性的魅力をほとんど、またはまったく感じない人を指します。いわゆる禁欲主義や性嫌悪とは異なり、本人にとって自然な感覚の一つです。もちろん、性的魅力を感じないからといって、愛情深い関係やパートナーシップを築けないわけではありません。
アセクシュアルの中には、性的行為そのものに興味がない人もいれば、パートナーとの関係性や他の理由から性行為を行う人もいます。また、恋愛感情は持つ場合もあり、アロマンティックとは必ずしも同じではありません。
近年では、アセクシュアルという言葉がSNSやメディアで取り上げられることが増え、性に関する多様な価値観の一つとして認知されつつあります。
アロマンティックとアセクシュアルが恋愛しないのは変?よくある誤解

今でもなお、恋愛や性は人生の中心にあるべきという価値観が根強い社会では、アロマンティックやアセクシュアルの人に対し誤解や偏見が向けられることがあります。ここでは、特によくある3つの誤解を解説します。
恋愛しない=心が冷たいという偏見
恋愛しない人は感情が乏しい・人を愛せないといった偏見は、恋愛感情と人間的な愛情を混同していることから生まれます。アロマンティックやアセクシュアルの人も、友情や家族愛、仲間への信頼など、深く温かい感情を持ちます。
恋愛感情は数ある愛情の一形態にすぎず、それがないからといって人間性や優しさが欠けているわけではありません。
過去の恋愛経験がない・ひどい経験からそうなったという誤解
アロマンティックやアセクシュアルは、必ずしも過去の経験によって形成されるものではありません。しかし一部では、恋愛をしたことがないからそう思っているだけ・失恋やトラウマのせいでそうなったという誤解が根強く存在します。
確かに人生経験が自己認識に影響を与えることはありますが、それが唯一の原因ではありません。セクシュアリティは本人の内面の感覚に基づくもので、外部からの単純な推測では測れないものです。
映画やドラマで恋愛が人生のゴールのように描かれる影響
多くの映画やドラマ、漫画では、恋愛が物語の中心であり、結婚やカップル成立が幸せのゴールとして描かれます。こうした文化的なメッセージは、恋愛をしないのは不自然・恋愛をしてこそ人生が充実するという価値観を強くします。
アロマンティックやアセクシュアルの人は、この価値観に当てはまらないために、周囲から理解されにくくなることがあります。メディアでも多様な表現が広がれば、恋愛以外の人生のあり方も自然に受け入れられる土壌ができるでしょう。
人生は恋愛や性がすべてじゃない!自分らしい関係を選ぶ
人生における恋愛や性の重要度は、人によって異なります。人生は必ずしも、恋愛や性がすべてではありません。アロマンティックやアセクシュアルの人も、自分にとって心地よい関係や生き方を選ぶことができます。他者の価値観に縛られず、自分らしい人間関係を築くことこそが、真の幸福につながります。