パートナーシップ制度とは、同性婚が法制化されていない日本で、同性カップルが自治体に申請をすることで婚姻に近い行政サービスを受けられるというものです。本記事では、制度の詳細や現在の導入状況、手続き方法や制度の課題をまとめました。
制度の意義と目的

パートナーシップ制度は2015年に東京渋谷区と世田谷区で初めて導入されました。男女間の婚姻と違わない関係性で生活を営んでいるのに、男女ではないがゆえに他人同士として扱われてしまう現状から、法律を変えずに導入できる制度としてはじまったものです。
法的婚姻との違い
パートナーシップ制度は、様々な点から法的な婚姻と近いといえます。
- 病院での面会や医療対応で家族と同様の扱いを受けられる
- 公営住宅にパートナーと「家族」として入居できる
- 生命保険の受取人にパートナーを指定できる
- 一部の携帯電話・光回線などで家族割が適用される
一方で、法定婚姻ではできるのに、パートナーシップ制度ではできないこともあるのが現状です。
例えば
- 相続、遺産の受け取り
- 手術の同意書(病院によっては可能な場合もある)
- 遺族年金の受給
- 税金の配偶者控除
- 国民健康保険の被扶養者になる
- パートナーの子供の親権者になる
このような場面では、配偶者として扱われず、パートナーシップに法的な婚姻と同じ効力があるとはいえません。
広がる自治体

2025年8月時点の導入自治体数とその分布
県全域で制度がある自治体は47都道府県中33あり、一部で制度の導入がある自治体は14あります。現段階では制度のない都道府県はない状況です。
特に県としてパートナーシップ制度を導入している都道府県では、県内であれば引っ越しのたびに申請をし直す必要もありません。
ただ、パートナーシップの相互利用連携がされている自治体同士であれば、引っ越してもそのまま追加の申請をせずに制度が適用されます。神奈川県や福岡県などで、相互利用連携が始まり、広がりつつあります。
参考
・パートナーシップ制度に関するよくある質問
・パートナーシップ制度の相互利用連携
・パートナーシップ制度導入自治体
申請方法と必要書類

では、実際にパートナーシップの宣誓・申請をするにはどうしたらよいのでしょうか。
パートナーシップ制度の申請は、原則として2人で自治体の窓口に出向いて行います。手続きの詳細は自治体によって異なりますが、大まかな手続きの流れは以下の通りです。
基本的な流れ
事前予約・相談: 多くの自治体では事前予約が必要です。電話やオンラインで相談できる場合もあります。
必要書類の準備: 一般的に求められる書類は次の通りです。
- 住民票(別世帯の場合は両者分)
- 本人確認書類(運転免許証やパスポートなど)
- 独身証明書または戸籍抄本
- 宣誓書(自治体指定の書式)
窓口での申請・宣誓: 職員の立ち会いのもと、パートナー関係であることを宣誓します。
その後、パートナーシップ証明書やカードが交付されます。
申請時の注意点
申請時に、2人とも成年であり、申請する自治体に在住または転居の予定があることが必須となっています。今回は大まかな流れをまとめましたが、自治体によって細かなルールが異なるため、各自治体の公式ウェブサイトなどで確認するようにしてください。
課題

パートナーシップ制度は急速かつ確実に広がっていますが、課題も残っています。
法的効力の限定
法的な婚姻と違い、相続や税制優遇といった重要な権利は得られません。人生の重要な場面で大切な人と「他人」と同じ扱いになるのは、大きな損失といえます。
自治体間の格差
利用できるサービスや対象範囲が自治体ごとに異なり、引っ越しの際に確認しなければならず、不便が生じることがあります。また、自治体の中での普及度によっては申請に時間がかかる場合があります。パートナーシップ制度自体に期間があり、その効果が期間限定的な自治体もあります。
社会的理解の不足
制度があっても、職場や地域での理解が十分でない場合、申請をためらう人もいます。特に職場ではクローズな状態で就労したい人などカミングアウトを積極的に望まない人にとっては、パートナーシップ制度を活用しにくい場面が多くなってしまいます。
制度の普及はよかった。次は

パートナーシップ制度は、同性カップルや事実婚カップルにとって、公的に関係性を認めてもらう大きな一歩です。導入から10年経ち、全国的な普及が進み、今では制度のない自治体はなくなりました。
しかし、法的な婚姻と同等の権利を持つわけではなく、制度の範囲や効力には限界があります。今後は、全国で統一的に利用できる仕組みや、より強い法的保護の実現が急務です。
そして、全てのカップルのために、同性婚の法整備も急がれます。