スマホの絵文字でもよくみるレインボーフラッグは、LGBTQ+のコミュニティの連帯や誇りを象徴するアイコンです。SNSやニュースをみて「なんでレインボーなの?」「いつからシンボルになったの?」など起源を知りたくなった方もいるのではないでしょうか。この記事では、レインボーフラッグの歴史や色の意味、世界各国で浸透している事例を解説します。
LGBTQ+をつなぐ「レインボーフラッグ」とは
レインボーフラッグは、LGBTQ+コミュニティの象徴としてよく知られるシンボルです。差別や偏見に抗う姿勢、あらゆる性自認・性的指向を認めて自分らしく生きる表明、多様性のある社会の実現を願う想いが込められています。
現在では、セクシャルマイノリティの当事者たちが自分自身の存在を肯定するため、アライ(支援者たち)が多様性を支持していることを表明するために広く使われています。
レインボーフラッグの起源と誕生秘話

レインボーフラッグの誕生は1978年に遡り、サンフランシスコ在住のアーティスト、ギルバート・ベイカーさんによって制作されました。当時、セクシャルマイノリティの当事者たちは厳しい差別に苦しんでおり、連帯や希望を象徴する”何か”を必要としていました。そのような環境下で誕生したレインボーフラッグが、どのようにして世界的なシンボルになるまでに至ったのか、その起源と誕生秘話をみていきましょう。
レインボーフラッグの生みの親ギルバート・ベイカーとは?
LGBTQ+の象徴となったレインボーフラッグを生み出したのは、サンフランシスコで芸術家・活動家をしていたギルバート・ベイカーさんです。ベイカーさんは陸軍を除隊後、ゲイコミュニティで発展してきたドラァグ文化(男性が女性のらしい格好をしたショーで表現するもの)に触れながら独学で縫製技術を身につけます。
1977年、活動家のハーヴェイ・ミルクさんと出会い、翌年に「希望と誇りを示すフラッグを作ってほしい」と依頼されて8色のレインボーフラッグが誕生しました。ハーヴェイ・ミルクさんは1978年に暗殺されており、当時の活動家たちが命懸けで権利を主張する運動をしていたことが伺えます。
ギルバート・ベイカーさんは、虹をモチーフにした背景について「空にかかる虹は、美しくて魔法のようなものです。すべての色・性・人種を体現するシンボルとしてぴったりなのです。」と語っています。
レインボーフラッグが8色から6色に変更された理由
1978年にデザインされたレインボーフラッグは8色ありました。
しかし、8色使ったレインボーフラッグを量産するには手間とコストが負担になったため、ホットピンクとターコイズが省かれ、インディゴはブルーに変わりました。
The pink and turquoise stripes were dropped the following year due to cost and display considerations, resulting in the better-known six-color design.
GLBT Historical Society
当時使われていたレインボーフラッグの色 | 意味 |
ホットピンク | sex(性) |
ターコイズ | art and magic(芸術と魔法) |
インディゴ | harmony(調和) |
LGBTQ+コミュニティの運動が活発化し、生地供給の問題が発生したため、6色のデザインが定着しました。
コミュニティの誇りと連帯のシンボルとして世界に浸透
1978年に誕生したレインボーフラッグが世界に広まったのは、1994年にニューヨークで開催されたプライド「ストーンウォール25周年」がきっかけとされています。ギルバート・ベイカーさんが作成した1マイル(約1.6km)もの長さのレインボーフラッグを1万人の参加者が掲げたことが話題になりました。
2003年には、さらに長い1.25マイル(約2km)のレインボーフラッグがメキシコ湾から大西洋まで掲げられ注目されました。こうしたインパクトのある活動を通じて、レインボーフラッグはコミュニティの誇りと連帯のシンボルとして浸透していったのです。
レインボーフラッグ6色に込められた意味
現在のレインボーフラッグは6色で構成されており、それぞれの色に意味があります。
レッド | life(生命) |
オレンジ | healing(癒し) |
イエロー | the sun(太陽) |
グリーン | nature(自然) |
ブルー | serenity(平穏) |
バイオレット | the spirit(精神) |
「虹色=カラフルだから多様性」と表現しているのではなく、それぞれの色に明確な意味があり、個性や違いを尊重しながら調和することが表現されています。
レインボーフラッグが使われている事例
レインボーフラッグは、コミュニティの連帯を示すほか、多様性やLGBTQ+を歓迎する姿勢を示すアイコンとしても広く浸透しています。ここでは、実際にレインボーフラッグが使われている事例をみていきましょう。
東京プライドにてレインボーとファッションを融合
日本では2012年から毎年6月のプライドマンスにTokyo Pride(旧:Tokyo Rainbow Pride)が開催されています。アジア最大級のLGBTQ+のプライドイベントとして知られ、参加者たちはレインボーフラッグのデザインを取り入れたファッションやアイテムで街を彩ります。
ファッションやアートを通じて人権とコミュニティ連帯を社会に訴えかけるスタイルは、多様性に富み、常に新しい文化を発信してきた、東京らしさそのものです。
MoMA(ニューヨーク近代美術館)がレインボーフラッグを収蔵
2015年、MoMA(ニューヨーク近代美術館)は、ギルバート・ベイカーさんがデザインした8色のレインボーフラッグを正式に収蔵することを発表しました。これは、レインボーフラッグがLGBTQ+コミュニティのシンボルという枠を超え、文化と歴史に大きな影響を与えた「芸術作品」として認められたことを意味します。
LGBTQ+選手の参加人数が過去最多となったパリ五輪

2024年に開催されたパリ五輪では、191名のLGBTQ+選手が参加し、過去最多を更新したことで話題になりました。開会式では多様性を歓迎・祝福する「レインボー・ゲームズ」と呼ばれる演出、LGBTQ+の選手や観客が安心して利用できる「プライドハウス」の設置で、レインボーフラッグが使われました。
レインボーフラッグには歓迎や連帯の意味合いがあり、世界的なスポーツ祭典を通じて明確な意思表明がされていることは、強い意味を持ちます。
レインボーフラッグの想いを未来に繋げよう!
レインボーフラッグは、LGBTQ+コミュニティが差別や偏見に屈しない連帯性と誇りのシンボルとして誕生しました。現在では「LGBTQ+コミュニティを歓迎する」「誰もが生きやすい社会づくり」などの意思表明として、世界中の街やイベントでも掲げられています。レインボーフラッグの起源や色に込められた意味を理解し、先人の想いを次の世代に繋げていきましょう。