昨今、有名人が自身のアイデンティティをカミングアウトするムーブメントが加速しており、社会全体で多様性への理解や受容が広がっています。SNSの普及に伴い、個人が自由に発信しやすいプラットフォームが整いつつあり、自由度の高い発信が生まれ、それに対するリアクションも活発になっています。
この記事では、LGBTQ+を公表した海外セレブや日本の芸能人について紹介します。
LGBTQ+を公表している海外セレブ
海外では「LGBTQ+作品では当事者が演技をするべきだ」という議論もされており、カミングアウトしてもキャリアを失わずに成功できる事例が増えています。
まずは、海外セレブについてみていきましょう。
ウェントワース・ミラー
1972年6月2日生まれ、イギリス出身の俳優。
『プリズン・ブレイク』のマイケル・スコフィールドを演じた俳優で知られるウェントワース・ミラーは、2013年にゲイであることをカミングアウトしました。当時、同性愛の宣伝を禁じる法律が施行されたロシアで開催されたサンクトペテルブルク国際映画祭への出席を辞退し、偏見や差別に対して強い抵抗の意を示したことが話題になりました。
ノア・シュナップ
2004年10月3日生まれ、アメリカ出身の俳優。
Netflixシリーズ『ストレンジャー・シングス』でウィルを演じてブレイクしたノア・シュナップは、2023年にTikTokを通じてゲイであることをカミングアウトしました。家族や友人に打ち明けたときに「知ってたよ」と自然な反応をされたこと、自身が演じているウィルとよく似ている(シーズン4からウィルがゲイであることが明らかになっている)ことを語っています。
最初はセクシャリティを公表することに躊躇していたそうですが、役を演じることで自身と向き合うきっかけになったと明かし、Z世代を中心に大きな共感を呼びました。
クリステン・スチュワート
1990年4月9日生まれ、アメリカ出身の女優。
映画『トワイライト』シリーズで爆発的な人気を集めたクリステン・スチュワートは、「Queer(クィア)」と自称し、性別問わず恋愛対象になるとカミングアウトしました。自身のセクシャリティを公にしたことでキャリアの一部に支障が出る経験もしていますが、それでも隠すことなく愛を語り続けた姿勢に多くの支持を集めています。
脚本家ディラン・マイヤーとは婚約を経て結婚式を挙げており、クィアとしてオープンでいる姿勢、多様化した家族の形を提示し続けています。
エレン・デジェネレス
1958年1月26日生まれ、アメリカ出身のコメディアン・司会者。
現在は自身でプロデュースする番組も数多く抱えるエレン・デジェネレスですが、1997年にレズビアンであると公表した当初はキャリアにも大きな打撃がありました。逆風に屈することなく「自分らしい生き方」を示し続け、世間からの支持を集め始めます。
女優ポーシャ・デ・ロッシとは、同性婚禁止の法律を乗り越えて2008年に結婚し、同性婚の理解を広める象徴的な出来事として語られています。
ビリー・アイリッシュ
2001年12月18日生まれ、アメリカ出身の歌手。
彼女は「カミングアウト」そのものに意味を見出さないと語っており、自身のセクシャリティを定義しない生き方を提唱しました。「なぜ存在するだけではダメなの?」と投げかけたクエスチョンに多くの若者が共感し、カテゴライズやラベリングされない価値観が広がっています。
エリオット・ペイジ
1987年2月21日生まれ、カナダ出身の俳優。
『JUNO』や『アンブレラアカデミー』で知られるエリオット・ペイジは、2020年にトランスジェンダーであることを公表し、エレンからエリオットに改名しました。子役として活躍していた9歳の頃から心と身体の不一致に気づいていたものの、自身のアイデンティティとハリウッドのスタンダードの狭間で苦しむ時期もあったと明かしています。
トップ・サージェリー(乳房を切除する手術)を受けたことでも知られており、反トランスジェンダーに対する法律の規制や差別に声をあげています。
ラバーン・コックス
1972年5月29日生まれ、アメリカ出身の女優。
Netflixシリーズ『オレンジ・イズ・ニュー・ブラック』に出演したことで話題になったラバーン・コックスは、性別適合手術を受けたトランスジェンダーです。インタビューでは「自分の身体だけではなく、人間性にも注目してほしい」と語っており、自身の経験を活かして教育や人権活動にも積極的に参加しています。
トランスジェンダーとしてハリウッドでキャリアを築き上げた彼女は、これから役者を目指すすべてのマイノリティの人たちに勇気を与える存在になっています。
サム・スミス
1992年5月19日生まれ、イギリス出身のシンガーソングライター。自身を「ノンバイナリー」と公表し、性別にとらわれないアイデンティティを受け入れ、創作活動においても型にはまらないスタイルで独自の世界観を披露しています。
MVや音楽祭典でもジェンダーレスのファッションを取り入れ、多様性の象徴として「ありのままの自分」を表現しています。
LGBTQ+を公表している日本の芸能人
海外セレブと比べると、日本国内で芸能人がLGBTQ+を公表している事例は少ないです。それでも、少しずつカミングアウトをする人も増えており、日本社会にも新しい価値観が根付きつつあります。
與真司郎

1988年11月26日生まれ、元AAAのメンバーの歌手。
アーティストとしてデビューして18年経ってからソロファンミーティングにて、自身がゲイであることを告白しました。自身のセクシャリティに違和感を抱きつつも誰にも言えずに苦しみ、偽って生きている状態に葛藤があったことを明かしています。
自身の過去を通じて、日本国内にいるLGBTQ+で悩む人たちに勇気を与え、多様性の理解と許容に貢献しています。
宇多田ヒカル

1983年1月19日生まれ、日本のシンガーソングライター。
6月のプライズマンスにインスタライブをした宇多田ヒカルは「わたしはノンバイナリー、ハッピー・プライドマンス」と語り、自身のアイデンティティをカミングアウトしました。
さらに、性別や婚姻状態によって異なる呼び方に違和感を感じていることを明かし、オリジナルで考案したミステリー(Mys.)という敬称をSNSに投稿したこともあります。
横山久美

1993年8月15日生まれ、サッカー選手。
女子サッカー元日本代表として活躍し、現在は岡山湯郷Belleに所属している横山久美は、性自認が男性のトランスジェンダーであることを公表しています。性別適合手術をしているわけではないので女子サッカー選手としてプレイしており、心と身体の性が一致しない女子選手に選択肢を示したいという思いを打ち明けています。
日本人女性とアメリカで婚姻届を出して結婚しており、スポーツ界でもLGBTQ+選手が成功できる事例を作りました。
共感と賛同を集めた数多くのカミングアウト
LGBTQ+をカミングアウトする有名人は増えており、過去の苦悩や差別に屈しない強い姿勢が多くの人の心を動かしています。多様性が当然であるべきという前提のもと、カミングアウトする行為そのものに疑問を投げかける人も出てきており、社会の在り方が大きく変わりつつあることがわかります。
勇気を出してカミングアウトした人たちの声に耳を傾け、誰もが自分らしく生きられる社会づくりに貢献しましょう。