身近な人から自身のセクシャリティや性自認について打ち明けられたとき、あなたならどのような反応をしますか? 驚きや戸惑いを感じることもあるかもしれません。けれど、そのカミングアウトの裏には「あなたを信頼している」という大切な想いがあります。この記事では、カミングアウトを受けたときに知っていてほしい接し方を解説します。
まずは受け止める姿勢を大切に
カミングアウトは、本人にとって大きな勇気のいる行動です。長い間、誰にも言えずに抱え込んできた思いを口にする瞬間だからこそ、あなたの最初の反応は相手にインパクトを与えます。
驚いたり、戸惑ったりする気持ちを持つことは自然なことです。しかし、その気持ちをそのまま言葉にするのではなく、まずは「話してくれてありがとう」と伝えましょう。その一言が、相手にとって安心できる大きな支えとなります。
沈黙も悪いことではありません。返答に悩んだら、「どう返したらいいかわからない。でも、私を信じて話してくれたことはうれしい」と素直に伝えるのも一つの方法です。もし話の中でわからないことがあれば、「わからないから教えてほしい」と聞く姿勢も相手にとって心強いものになります。

否定や押し付けは絶対にしない
相手が勇気を出して打ち明けたとき、「そんなはずない」「気のせいだよ」と励ますつもりで言った言葉が、実は大きな傷になることがあります。これは、本人の存在そのものを否定することにつながるからです。
また、「普通はこうだよ」「こういう生き方のほうが楽だよ」と行動や価値観を押し付けるのもNGです。性のあり方は一人ひとり違います。変えたり直したりするものではありません。
大切なのは「あなたはそのままで大丈夫」というメッセージを伝えること。たとえば、「あなたが安心して過ごせるなら、それが一番だよ」という言葉は、相手に安心感を与えます。
プライバシーを必ず守る
カミングアウトは、その人とあなたとの信頼関係の上に成り立っています。本人の許可なく第三者に話すことは絶対にしてはいけません。これを「アウティング」と呼び、大きな問題につながる行為です。
たとえば、学校や職場で何気なく「〇〇〇さんの性自認は〇〇〇なんだって」と話してしまうと、相手が差別や偏見を受けるきっかけになってしまいます。信頼して話してくれたのに、それを裏切るようなことはあってはなりません。
実際に、アウティングを受けて不利益を被ったケースも多数報告されています。2015年に起こった一橋大学アウティング事件もその一つです。一橋大学に在籍していた学生Aさんが、同性の同級生に恋愛感情を告白しました。その同級生がLINEのグループチャットでAさんの性的指向を無断で暴露したことをきっかけに、Aさんは精神的に不調となり、自ら命を落としたのです。
カミングアウトしてくれた相手の性的指向や性自認について他の人に伝える必要がある場合は、必ず事前に「誰にまで話してもいいのか」を本人に確認しましょう。プライバシーの尊重は「最低限のルール」であると同時に、相手を守るための大切な行動であることを忘れないでください。

学び続け、サポートする姿勢を持つ
寄り添うためには、LGBTQ+に関する正しい知識を持つことも欠かせません。インターネットの記事や書籍、信頼できる団体の情報を通して学ぶことで、理解を深めることができます。
LGBTQ+の困りごとに関して相談できる団体や制度を知っておくのもいいでしょう。相手が困ったときに、「相談先をいくつか知っているから、一緒に探せるよ」と伝えるだけでも心強いものです。
そして何より大切なのは、「あなたを支えたい」という気持ちを言葉や行動で示すことです。「何か力になれることがあったら教えてね」という一言は、シンプルですが大きな意味を持ちます。その姿勢こそが、長く支え合うための土台になります。
また、寄り添う姿勢を持つことは、周囲にも良い影響を与えます。「多様なあり方を認める文化」を広げることができ、学校や職場、家庭の雰囲気をより安心できるものに変えていけるでしょう。

カミングアウトは、信頼の証
相手があなたを信頼しているからこそ、カミングアウトをしてくれるのです。まずは受け止めて感謝の気持ちを伝えること。そして否定せず、プライバシーを尊重し、学び続ける姿勢を持つことが大切です。
寄り添うことは、当事者本人を支えるだけでなく、周囲に「多様なあり方を受け入れる文化」を広げる一歩にもなります。大切な人の勇気に応えるために、あなたの一言や行動がきっと力になります。