パンセクシュアルとオムニセクシュアルは、どちらもすべての性が恋愛対象になり得るように見える点で似ています。しかし、その内面には性別を意識するかどうかという大きな違いがあります。
この記事では、パンセクシュアルとオムニセクシュアルの定義や背景、混同されやすい理由、違いを理解する上で重要なポイントを詳しくまとめました。
パンセクシュアルとオムニセクシュアルの違い

パンセクシュアルとオムニセクシュアルは、恋愛や性的魅力を感じる対象の範囲が広く、どちらも多様な性別の人に惹かれる可能性があります。共通点が多いため混同されやすいですが、最大の違いは性別という枠組みを意識するかどうかです。
パンセクシュアルは性別そのものを判断基準にせず、人柄や価値観といった要素で惹かれる傾向があります。一方、オムニセクシュアルは性別を認識しつつ、そのすべての性別に魅力を感じる可能性があります。
パンセクシュアル|性別を意識せずに人そのものに惹かれる
パンセクシュアルは、パン=すべてというギリシャ語を語源とし、相手の性別や性自認を恋愛対象の判断基準としないセクシュアリティです。男性・女性・ノンバイナリーなど、あらゆる性別の人と恋愛関係になる可能性がありますが、性別そのものは好意の条件にならず、相手の人柄や価値観、内面に惹かれます。もちろん、誰でも好きになるわけではなく、あくまで性別というフィルターを通さずに相手を見る考え方です。
パンセクシュアルという用語は比較的新しく、日本では2010年代以降、SNSやLGBTQ+関連の啓発活動を通じて広がりました。恋愛対象を性別で区切らない姿勢が、多様性を尊重する価値観とも結びついています。
オムニセクシュアル|性別を意識しながらすべての性が恋愛対象
オムニセクシュアルは、オムニ=すべてというラテン語を語源とし、すべての性が恋愛対象となり得るセクシュアリティです。パンセクシュアルとの違いは、性別の存在を意識しているかどうかです。オムニセクシュアルは、男性・女性・ノンバイナリーなど多様な性別の人に惹かれますが、その性別を認識したうえで魅力を感じる場合があります。
例えば、男性に惹かれるときと女性に惹かれるときで感じ方や関係の築き方が微妙に異なることもあります。これは性別によって魅力を感じないのではなく、性別を意識した上ですべての性別が恋愛対象になるという点で特徴的です。このため、自身の恋愛感情に性別が少なからず影響する人は、パンセクシュアルではなくオムニセクシュアルという言葉を選ぶことがあります。
パンセクシュアルとオムニセクシュアルが混同される理由

パンセクシュアルとオムニセクシュアルは、側から見るとすべての性別が恋愛対象になり得るように見え、どうしても日常の行動や交際の様子からは違いが判別しづらくなります。また、SNSやメディアでは短くまとめられることが多く、性別を意識するかどうかという内面の違いが説明されないまま、同じ意味で扱われることもあります。
性別を意識する・しないは外から見えにくい
パンセクシュアルもオムニセクシュアルも、男性・女性・ノンバイナリーなど幅広い性別の人と交際することがありますが、その背景にある性別を意識するかしないかという違いは外から見てもわかりません。内面の感覚や価値観に基づくものであり、行動だけで判断できないため、結果的に同じカテゴリーとして誤解されやすいです。
メディアやSNSでの説明省略や誤訳が起こっている
パンセクシュアルとオムニセクシュアルは、どちらも英語圏由来の言葉であり、日本語の記事やSNSで紹介される際に定義の違いが省略されることがあります。特に「全性愛」という訳語はどちらにも用いられ、性別を意識するかどうかという核心部分が伝わらないまま広まる場合があります。
さらに、SNSプロフィールでは文字数制限のため「パン」や「オムニ」とだけ書かれることが多く、背景説明が省かれがちです。
自己認識の変化でセクシュアリティが変わることがある
セクシュアリティは一度決めたら固定されるものではありません。人生経験や人間関係、自己理解の深まりによって変化することがあり、これが結果的にセクシュアリティの複雑性を増していることもあります。
ある時期はパンセクシュアルと認識していた人が、自分が性別を意識して惹かれることに気づき、オムニセクシュアルと名乗るようになることもあります。逆に、性別を意識していると思っていた人が、次第に性別を意識しない惹かれ方にシフトし、パンセクシュアルと感じるようになる場合もあります。
2つの違いは性別を意識するかどうか
パンセクシュアルとオムニセクシュアルは、性別を恋愛感情の中で意識するかどうかが決定的な違いです。どちらが優れているわけでも正しいわけでもなく、本人の感覚に最も近い言葉を選び、それを尊重することが大切です。この理解が、より多様で包摂的な社会を築く一歩となります。